Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

子宮頸がんのワクチン問題 男も女も接種すれば撲滅できる

 ワクチンの販売開始から平成26年3月までに接種したのは約388万人で、接種回数は約890万回。そのうち有害事象として報告されたのは176件。10万接種に2件の割合です。「有害」と書きましたが、今のところワクチンと症状の因果関係は認められていません。こういう調査では、接種した人に生じた症状をすべて「有害事象」としてリストアップし、その後解析するのです。

 では、ワクチンの効果はどうか。騒動でワクチン接種の積極的勧奨は中止されましたが、その後継続されたとすると、接種者は約170万人。HPVにはいくつかの型があり、ワクチンがカバーするのは全体の7割ほどで、ワクチン接種で回避できる死亡は約6000人と推計できます。子宮頚がんは毎年1万人が発症し、3000人が命を落とす病気です。

 冒頭の言葉で「撲滅」とありましたが、ワクチンのカバー率が7割ですから、現状はすべてではありません。それでも、リスクとベネフィットをてんびんにかければ、ワクチンの効果は極めて高いといえるでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。