例年より早く患者が出現 「マイコプラズマ」大流行の兆し

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「重篤な状態に陥りかねない病気が流行するかもしれない」という情報をキャッチした。一体、どういうことか?

 感染症の「マイコプラズマ」は、寒い季節に患者が増える。ところが、「今年は違った動きを見せている」と話すのは、池袋大谷クリニックの大谷義夫院長。現在まで臨床教授を兼務する東京医科歯科大学などで、長く呼吸器疾患を診てきた専門医だ。

「当院で、8月後半から1日1人以上の患者が出ている。9月16日(取材日)時点で患者数は計28人です。昨年の今ごろは患者数はゼロでした。本来は10月以降に増える疾患なので、例年では考えられない状況です」

 実際、大谷院長は8月中旬にテレビ番組スタッフから「夏に増える呼吸器疾患」という企画を提案された際、候補に挙がったマイコプラズマに関しては「まず、ない」と回答。呼吸器内科医の仲間も同意見だった。

 しかし今、違った見方をしている。池袋大谷クリニックだけでなく、国立感染症研究所のデータからも患者の出始めが早いことが認められると指摘する。

「その理由は分かりませんが、もともとマイコプラズマは不定期に大流行するといわれており、今年はその年に当たるのかもしれません」

 マイコプラズマは、対策が遅れると肺炎に至る。数日のうちにレントゲンで肺が真っ白に写るほど重症化し、すぐに入院して人工呼吸器装着となった患者も、大谷院長の過去の例ではある。そこまでいかなくても、マイコプラズマから続いて咳喘息を発症、さらに完治が困難な喘息に移行――というリスクもある。回避するために押さえておくべき知識は次の通りだ。

■激しい咳が特徴

 まず、潜伏期は1~3週間。初期症状として特徴的なのは激しい咳で、風邪とは明らかに違って「眠れない」「話ができない」ほどひどい。

 同じく激しい咳を特徴とする病気に咳喘息がある。ただ、咳喘息は風邪をきっかけに発症することも多い。一方、マイコプラズマは「咳が出始めたと思ったら、急に激しく咳き込むようになった」というように“突然”といったイメージが強い。

 次に、診断法だ。2年ほど前までは血液検査が中心で、判断に迷うこともあったという。しかし、この1年ほどは喉の細胞を採取して調べる非常に精度の高い検査キットが登場し、「迅速診断」という名の通り、15分ほどで診断がつく。

 ただし、内科を掲げる開業医のすべてが呼吸器内科医とは限らず、迅速診断にたどり着かない可能性もある。疑わしければ、専門医を受診すべきだ。

 そして、治療。3タイプの抗生物質があり、症状に応じて選択される。耐性ができるのを避けるために、症状が軽微なら古いタイプの薬を用いる。1週間ほどの服用になる。

 マイコプラズマの早期発見・早期治療が重要なのは、前述の「重症化を防ぐ」に加え、「感染を広げない」ため。感染力は強くはないものの、身近に患者がいれば、感染率は高くなる。

「咳喘息を疑って受診した夫が検査でマイコプラズマと確定。翌日、妻も同病と判明」「会社の同僚がマイコプラズマ。自分も咳が出るので受診するとマイコプラズマだった」という患者が、取材前数日間だけでも、大谷院長のもとにいた。

「インフルエンザなどの感染症と異なり、マイコプラズマは20~50代で体力があり、免疫力もしっかりしている年代が悪化しやすい。油断は禁物」

 飛沫感染なので、感染者は「うつさないために」、感染者の周囲の人は「うつされないために」マスクの徹底を。ただ、予防的に薬を服用するなど、積極的な対策は必要ない。

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