看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

がんの心の不調に対応 「サイコオンコロジー」ってなに?

 9月23、24日に北海道札幌市で第29回サイコオンコロジー学会総会が開催されました。今回は、がん医療で「心」を専門とするサイコオンコロジーについてお話しします。

 サイコオンコロジーとは、「精神・心理学」のサイコロジーと、「腫瘍学」のオンコロジーを組み合わせた造語です。これらの実践に取り組む専門家がサイコオンコロジスト(精神腫瘍医)。がんの治療や療養を続けるうえで生じる不眠や不安、気分の落ち込みに対して、精神的な治療を含めた医学的なサポートをする専門家なのです。

 がん患者さんは、がんだけでなく、抑うつや認知症、せん妄などにお困りのことも多い。たとえば、抑うつで抗がん剤治療が継続できなくなった場合、精神的なサポートに加え、抗うつ薬の処方を検討するのですが、抗うつ薬の中には作用機序として抗がん剤と相性の良くないものもあります。

 そんな時、主治医はサイコオンコロジストに相談します。うつにもいろいろな症状があり、薬もさまざまですので、サイコオンコロジストは専門的にその症状を診断し、使用可能な薬剤の提案や経過観察など、抗がん剤治療が継続できるような医学的サポートを行うのです。

 対象は患者さんだけではありません。大切な人ががんと闘っていたら、家族だって眠れなくなったり、気分が落ち込んだりします。がん医療の現場では、患者さんの療養のために彼らが大切に思っている家族や友人へのサポートも欠かせません。

 私自身も、患者さんの妻や夫が精神的につらくなってサポートが必要だと感じ、緩和ケアチームなどと相談して専門家につないだことがあります。精神科の受診に抵抗がある方もいるかもしれません。でも、がんとともに生きるためには、体だけでなく心の状態も整っていないとつらくなり、時に継続できなくなります。

 だから、勇気を出して「眠れないんです」「食欲がなくて気力が湧きません」といったSOSを発信することが大切なのです。