本当は怖い!歯の病気

人によって進行に違い 歯周病になりやすい人の共通点

糖尿病や骨粗鬆症の人は注意
糖尿病や骨粗鬆症の人は注意(C)日刊ゲンダイ

 歯を失う最も大きな原因は歯周病だ。しかし、一口に歯周病といっても人により進行に違いがある。なぜか。自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

「歯ぎしりや噛み合わせなどの力学的要因を除き、歯周病が重症化する要因は3つです。1つは口の中にすみついた歯周病菌の種類と数、それに悪性度。2つ目は患者さんが持つ免疫力、最後は喫煙などの生活習慣です」

 口腔内には数百種類の常在菌がいる。歯周病の進行が速い人や重症化している人は、より悪性度の高い歯周病菌を持っていることが多い。

「赤信号という意味で『レッドコンプレックス』と呼ばれる3種類の歯周病菌がその代表例です。具体的には、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)、トレポネーマ・デンティコラ(Td菌)、タネレラ・フォーサイセンシス(Tf菌)です」

 Pg菌は、付着能力が強力で、バイオフィルム形成を後押し、その毒性により骨を溶かし、悪臭を放つ。Td菌は歯周組織や血管の中に侵入して増殖する。Tf菌は女性ホルモンによって発育が促される歯周病菌で、思春期や妊娠中の女性の歯肉炎の原因となることが知られている。

「この中で特に注意したいのはPg菌です。悪性度が高く、通常の5倍の速さで歯周病が進行するといわれています」

 また、歯周病菌と戦う能力=免疫力は、病気持ちの人は低い。特に気をつけたいのが糖尿病や骨粗鬆症の人だ。

「調査により違いがありますが、糖尿病の人は、そうでない人に比べて、おおむね2倍近く歯周病になりやすいことが報告されています。高血糖による血管障害により、歯肉の血流が悪くなって歯周組織が酸素や栄養不足になるうえ、全身の免疫低下により、歯周病菌が繁殖しやすくなります。また、唾液の分泌が減り、制菌作用が衰えるため、虫歯菌の動きはますます活発になるのです」

 ちなみに、歯周病になると歯周病の病巣から分泌されたサイトカインが血糖をコントロールするインスリンの働きを阻害し、糖尿病を悪化することが分かっている。

「骨粗鬆症は骨の量が減ってもろくなり、折れやすくなる病気です。骨は古い骨を壊して新しい骨を作る“骨代謝”を繰り返しますが、骨粗鬆症になると、このバランスが崩れて骨の密度が減る。その結果、歯を支える歯槽骨の吸収が進みやすくなるのです」

 実際、閉経により女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が低下した女性は歯周病になりやすいことが分かっている。