“ぼんやり不調”こそ漢方薬を 西洋医学と何がどう違うのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 なんとなく体調が悪い。そんな時こそ漢方だ。

「こんな症状に悩まされていませんか?」と問いかけるのは、聖路加国際病院リウマチ膠原病センター副医長で、日本東洋医学会漢方専門医の津田篤太郎医師。「疲れやすい、気力がない」「風邪をひきやすい」「夜眠れない、しょっちゅうトイレに起きる」「頭が重い」「喉や胸が詰まったような感じがする」「髪の毛が抜けやすい」「手足が冷える」といった症状だ。

 こういった「ぼんやりした症状」で、しかも検査数値に異常がないケースは西洋医学では対処が難しい。結果、「どこも悪いところはありません」「それは気のせい/年のせい」「更年期障害ですね」「自律神経失調症ですね」といった対応をされがちだ。不調は依然、解消されないまま。読者にも経験があるのではないか?

「一方、漢方医学では検査数値の正常・異常ではなく、全体のバランスで診ます。なんらかの不調があれば、バランスが崩れていると診て、対策を講じます」

■半年以上続いたつらさが3週間で消えた

 60代の女性は、手のこわばりから始まり、足、両肘、両膝の関節など全身が痛むようになった。指も曲がり戻らない。検査では異常なし。受診した整形外科、内科、婦人科からそれぞれの専門分野から見た薬が処方され、症状は良くならないのに薬だけが増えた。

 女性はリウマチを疑い、津田医師の外来を受診した。目、舌、脈、腹、食欲、口の渇き、イライラ感、生活上での悩みなど複数面からの診察で、津田医師は「更年期障害による関節症」と診断。強いストレスと、関節に関係する女性ホルモンの不足とで、体全体の不調を招いていると説明した。

 心身の疲れを改善する「柴胡桂枝乾姜湯」を処方すると、半年以上苦しんでいた症状が3週間でさーっと消えたという。

「関節痛だけでなく、女性が抱えていたさまざまな不快な症状もなくなり、心身ともに良くなられた。西洋医学では一つ一つの症状を拾い上げて対処するので薬が山のようになるが、漢方医学では体全体を診るので1~2種類の漢方薬でころっと治る人がいるのです」

 漢方医学の概念の一つに、肝・心・脾・肺・腎の「五臓」がある。「肝=肝臓」ではなく、「肝」には肝臓のほか、大脳辺縁系、骨格筋、骨髄も含まれる。同時に精神的機能とも関連していて、肝は感情と相互関係にある。肝以外の五臓に対しても同様だ。

 例えば、風邪をひいたとする。西洋医学では「風邪薬」となるが、漢方医学ではさらに突き詰め、「風邪をひきやすく寒がり」「運動不足」「痩せ形」「くよくよする」「皮膚は光沢がなく、荒れている」「体毛が多いが薄い」といった場合は、いずれも「肺」につながる症状から、肺の状態を改善する漢方薬が用いられる。よく使われるのは「麻黄」だ。

 ただし、同じ風邪でも麻黄が有効な風邪と無効な風邪がある。日頃から丈夫な人の風邪のひき始めで、熱は高く、悪寒が強く、皮膚は鳥肌が立ち、汗はない。こういう場合は麻黄がよく効く。しかし、日頃から虚弱で食欲がなく、熱はあまり出ないが倦怠感が強く、汗が漏れるように出て、すでに長引いた風邪では麻黄は無効だ。

 つまり、漢方医学を上手に利用するには、本人が「こんなこと、今の心身の不調には必要ない話かも」と思うようなことでも、洗いざらい医師に伝えたほうがいい。質問に効率よく答えるために、あらかじめメモしておくのも手だ。

 その不調、悩み続けず、漢方医に相談を。

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