これで痛みを取り除く

盲腸はお腹を温めず食事も抜く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 一般的には「盲腸」と呼ばれるが、正式な病名は「急性虫垂(ちゅうすい)炎」。大腸の一部の盲腸の先端からぶら下がっている長さ6~7センチ、鉛筆ほどの太さの虫垂が、細菌感染して化膿性の炎症が起こる病気だ。東京逓信病院・消化器内科の橋本直明部長が言う。

「最初は上腹部中心の腹痛と、気持ち悪い(吐き気)症状が表れます。そして、数時間から24時間以内に痛みが右下腹部に移動します。ただし、このような典型症状を示す患者さんは決して多くはありません。盲腸の位置が通常と違ったり、癒着などがあると、痛みが左下腹部や背中に移動するような症例もあります」

 食中毒や腸閉塞との症状の違いは、下痢や便秘などの便通異常が見られないことだ。

 いずれにせよ、虫垂炎の疑いがあれば、進行させないためにもお腹を温めてはいけない。食事を取らずに、早く病院を受診することが肝心。放置すると虫垂が破裂して穴が開き、腹膜炎を起こして命取りになることもあるからだ。診断は、「採血」「触診」「画像検査」などをして、総合的に判断される。

 虫垂炎の治療で「薬で散らす」という方法をよく耳にするが、よほどの理由がない限り、その選択肢はないという。

「高齢者で重い基礎疾患があって、すぐに手術できないような患者さんでは、入院して絶食、抗生物質の点滴で2~3日様子を見る場合もあるでしょう。しかし、それで腹痛や炎症の進行が治まるようなら虫垂炎ではない可能性もあります。通常、虫垂炎と診断されれば手術で切除するのが基本になります」

 手術は全身麻酔で、施設によって開腹手術か腹腔鏡下手術で行われる。開腹での切開は3センチほど、腹腔鏡下では2センチほどの切開を1カ所と2~3カ所の孔(あな)を開けて手術する。

「手術の所要時間は軽症であれば30分くらいですが、癒着や穿孔(せんこう=穴が開く)があればさらに時間がかかります。入院期間も普通なら腹腔鏡下手術で3~4日くらい、開腹手術で約1週間。腹膜炎を起こしている場合には1カ月くらいの入院が必要です」

 手術をすれば、虫垂炎は根治できる。通常、術後2~3日して、おならが出れば腸が正常に動きだした目安になり、消化のいい食事を取れるようになるという。

「虫垂にはリンパ系細胞が多く免疫に関与していますが、切除しても問題はありません。ちなみに『スイカやブドウの種をのみ込むと盲腸になる』というのは迷信です」