天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

二尖弁は高リスク 大動脈の病気は血圧コントロールが重要

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 こうした大動脈の病気が怖いのは、多くの場合で自覚症状がないことです。そのため、それまでは元気だった人が、突然、大動脈の破裂や解離を起こして亡くなってしまうケースが起こるのです。

 大動脈の病気による突然死を防ぐためには、「高血圧」を放置しないことが重要です。突然死を起こす人は高血圧の人が多く、手術が必要になるくらい病状が進行してしまう患者さんも、血圧が高い場合がほとんどです。つまり、血圧が高い人は、自分では気づいていなくても、こぶができている可能性が高くなるといえます。

 健診などで血圧が高いと指摘されている人は、薬を飲んだり生活習慣を見直してきちんと血圧をコントロールするだけでなく、早めに心臓CT検査を受け、自分が大動脈瘤ではないかどうかをチェックしておいたほうがいいでしょう。

 こぶが見つかった場合、胸部で5.5センチ未満(場合によっては4.5センチ未満)、腹部で5.5~6センチ未満なら、生活習慣を改善しながら経過を観察するのが一般的です。それ以上にこぶが大きい、または大きくなった場合は、ステントグラフト(人工血管の中にバネを入れたもの)を動脈瘤に留置して破裂を防ぐ「ステントグラフト内挿術」という内科治療や、こぶがある場所の血管を取り換える「人工血管置換術」という外科手術を行います。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。