Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

肝臓がんは肝炎段階で治療すれば防げる

肝臓がんで治療中(C)日刊ゲンダイ

 肝臓がんは、肝臓そのものの肝細胞がんと、肝臓の内部を通る肝内胆管がんに分けられますが、9割は肝細胞がんですので、ムッシュもその可能性が高いでしょう。

■血小板で進行予測

 で、なぜ予防が可能かというと、慢性肝炎から悪化した“成れの果て”の状態が肝硬変ですが、ほとんどの肝臓がんは肝硬変にできます。肝硬変に移行すると、血小板の数が低下するなどの変化があり、その数値をフォローすることで、肝臓がんの発症を予測できるのです。また、肝臓がんが大きくなると、腫瘍マーカーの「α―フェトプロテイン」が上がります。

 つまり、慢性肝炎の状態で治療すれば、肝臓がんへの進展を食い止めることができるのです。

 慢性肝炎を起こす原因は、8割が肝炎ウイルスで、残りの2割がアルコールと肥満。肝炎ウイルスはB型とC型がありますが、輸血用血液はどちらも除去されているため、新規の肝炎ウイルス感染者は激減。210万~280万と推計される感染者は40歳以上が9割。しかもB型はワクチンで予防でき、C型は感染しても駆除する治療法ができたため、肝臓がんによる死亡率はこの10年で半減しています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。