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【アレルギー疾患の漢方】日本医科大学付属病院東洋医学科

右は高橋秀実教授
右は高橋秀実教授(C)日刊ゲンダイ
西洋薬の量と副作用が減り漢方薬だけで済む場合も

 東洋医学(漢方治療)に精通する循環器、消化器、アレルギー・膠原病、皮膚科、産婦人科などを専門とする医師が中心となって、診療にあたっている。受診者の多くは「西洋薬を服用しているが、強い副作用が心配なので漢方薬を併用したい」「西洋薬自体を減らしたい」などの理由で訪れる。

 診療はあくまで西洋医学(検査や診断)で進められ、同科は院内外の紹介患者に対し漢方薬や鍼灸治療の併用を担当する。そのため対象疾患は多岐にわたるが、アレルギー疾患も得意分野のひとつ。日本東洋医学会のみならず、日本アレルギー学会の研修指定施設にもなっている。部長の高橋秀実教授が言う。

「訪れる患者さんは、がん、リウマチ、膠原病、慢性腎炎、慢性肝炎、各種皮膚疾患、婦人科疾患など多岐にわたりますが、その中にはアレルギー疾患を抱える患者さんも多いのです。西洋薬での副作用が懸念された場合には、漢方薬の併用をすすめています」

 アレルギー疾患といえば、鼻炎、結膜炎、気管支喘息、過敏性腸炎、アトピー性皮膚炎など。それに対して西洋医学で使う薬は、主に「抗アレルギー薬」「抗ヒスタミン薬」「ステロイド」。抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の副作用は、眠気、喉の渇き、便秘などがあり、ステロイドは血糖上昇、胃炎、骨粗しょう症、免疫力低下などがある。

 これらの西洋薬に漢方薬を併用することで、西洋薬が減量でき、副作用も減る。最終的には漢方薬の服用だけで済む場合も多いという。

「たとえば、気管支喘息の料理人の患者さんでは、吸入ステロイドを使用していると副作用で味覚が変わってしまって仕事に支障が出ることがあります。その場合、漢方薬の併用によってステロイドの使用を最小限に抑えることができるのです」

 漢方薬は副作用が少ない代わりに、効き目がゆっくりでマイルドなイメージがある。しかし、そんなことはなく、即効性のある漢方薬もたくさんあるという。鼻水には「小青竜湯」、鼻閉には「辛夷清肺湯」、皮膚炎には「黄連解毒湯」、喉が痛い風邪には「銀翹散」などは、すぐに効く漢方薬の代表格だ。

 さらにアレルギー性疾患の場合、2つの漢方薬を組み合わせると併用効果で、より高い有効性が見込めるという。どの漢方薬を組み合わせるかに関しては、テクニックを要する。

「長期化し、気温変化の激しい季節の変わり目に症状が強いアレルギーの病態は、東洋医学では体に熱っぽい部分と寒い部分が同時にできると考えられています。ですから、熱を取る漢方と冷えを取る漢方とを組み合わせて処方します」

 漢方薬には、エキス剤(顆粒)、錠剤、煎じ薬などがあり、保険適用外のものもある。保険適用外薬を使う場合には、混合診療にならないように診療日を変えて処方する。漢方薬の代わりに鍼灸(保険適用外)を併用することもあるという。

 西洋薬を減らしたい、やめたいような場合、東洋医学の治療を検討してみてはどうだろうか。

■データ
 1910年開設の日本医科大学付属の本院。
◆スタッフ数=医師9人、鍼灸師6人
◆年間患者数=延べ約8500人
◆受診要件=紹介状必要、完全予約制
◆東京都文京区