病院は本日も大騒ぎ

「点滴殺人」の遠因は医療廃棄物の減量化にあり?

“点滴殺人”で大騒ぎの横浜・大口病院
“点滴殺人”で大騒ぎの横浜・大口病院(C)日刊ゲンダイ

 現在、関東圏の大学付属病院で看護師として勤務しているマサエです。

 神奈川県の民間病院で起きた「点滴殺人事件」が話題です。こういう事件が起こると、点滴に不信感を持つ人が増えてきます。そこで、病院が点滴事故を起こさないように、どのようなチェックをしているかを説明します。

 点滴は、看護師がほぼ毎日のように扱いますから、細心の注意を怠りません。それでもトラブルは起こります。

 一番多いのが点滴漏れですね。原因は、患者さんが動いてしまって、針がずれてしまうケース。また認知症の患者さんは、自ら点滴ルートを引っ張ってしまい、腕が血だらけになってしまうこともあります。

 お年寄りの患者さんは、点滴の痛みに我慢ができず、体を動かす人も多いので、滴下がスムーズにいきません。そのために、腕がパンパンに腫れてしまうこともあります。

 別の病院では、同姓同名の患者が入院し、点滴の種類を間違えるという医療ミスがありました。そうしたミスを防ぐために、今はカルテに「同姓あり」「同姓同名あり」などを記載し、ナースコールセンターのボードにも、点滴ミスの注意喚起を促す掲示をしています。

 点滴は、「自動点滴装置」を使用している病院が多く、異常があればアラームが鳴る仕掛けになっています。ただ、過信すると、点滴が漏れていても自動的に滴下を続け、事故が起きかねません。ですから自動点滴装置は、看護師が少ない病院や小児病棟では、あまり利用されないようです。

 一般的に点滴は、医師の指示のもとに薬局が指示通りに準備します。看護師は医師が書いた処方箋を見て薬品を確認し、病棟に持ち帰ります。

 さらに、その薬品を看護師2人が医師の指示簿、処方箋を見ながらチェックし、点滴を準備する保管室に保管します。通常、保管室には医師か看護師らしか入室できません。

 看護師は点滴を患者さんの名前と点滴の内容を確認し、施行するときは看護師2人が立ち会い、医師から指示された速度で滴下します。

 ただし、点滴が「抗生剤」だと、初回は医師が行い、スタートから5分間付き添います。異常がなければ、看護師が10分後、以後15分ごとに病室を訪ねて確認します。

 昔、点滴の容器はガラス瓶でした。針を刺す栓もプラスチックで閉じられていて、その上から針を刺して異物を混入させることなど不可能でした。仮に刺せたとしても大きな穴が開き、看護師が気付きます。

 点滴の容器は、ガラス瓶からビニールになりました。医療廃棄物の減量化のためです。それが“盲点”になり、事件につながったかもしれません。