おいしい季節こそご用心 鮮魚には寄生虫がこんなにいる

近年は「そのまま刺身」が人気だが…
近年は「そのまま刺身」が人気だが…(C)日刊ゲンダイ

 サンマ、アジ、サケ、カツオ、サバ、ヒラメ……。秋から冬にかけて、魚がおいしい季節を迎える。近年、輸送の進歩によって新鮮な刺し身を手軽に食べられるようになったが、その分、寄生虫による食中毒が増えている。魚好きは注意すべし。

■腸の手術が必要なケースも

 魚を経由する寄生虫の中で、まず警戒すべきなのが「アニサキス」だ。クジラやイルカの胃の中で成虫になる寄生虫で、クジラやイルカの糞と一緒に卵が海中に放出され、それを捕食したオキアミの体内で幼虫に発育する。そのオキアミをエサとして食べる魚を経由して人間の口に入り、体内に侵入する。

 侵入したアニサキスは胃や腸の中で暴れ回り、歯を突き立てて粘膜に入り込む。激しい腹痛や嘔吐を起こすだけでなく、腸粘膜を突き破られ、腹水がたまって腸を切除しなければならなくなったケースもある。

 サバ、サンマ、イワシ、サケ、スルメイカへの寄生が多く、アジやカツオへの寄生も確認されている。厚労省の「食中毒事件一覧速報」では、2013年のアニサキスによる食中毒の件数は88件で、ノロウイルス、カンピロバクターに次いで3番目に多い。今年も1~8月に56件の発生が報告されているが、病院で受診しない人も多いため、年間2000~3000件も発生しているとみられている。

 寄生虫に詳しい東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏(感染症学)が言う。

「アニサキスによって起こる激痛は、アレルギー反応によるものです。1度目は問題なくても、2度、3度と繰り返すことで抗体が作られ、痛みを発症するようになります。胃に入った場合、多くは生食後6時間ほどで激しい腹痛を起こし、数時間続いた後には胃の粘膜からアニサキスが外れて痛みはなくなります。しかし、あまりの激痛に多くは救急搬送され、内視鏡でアニサキスを取り除く治療が行われます」

 胃を通過して腸にまで入り込まれてしまうと、さらに厄介だ。腸の粘膜に食らいついたアニサキスはなかなか外れないため、腸閉塞を起こして腸を切除しなければならないケースもあるという。

「アニサキスは、酢でしめても、わさびやしょうがと一緒に食べても死にません。70度以上で加熱するか、マイナス20度で24時間冷凍する必要があります。近年は解凍したものは味が落ちるといって、そのまま刺し身で食べる人が増えていますが、それだけリスクが高まっているといえます」

■養殖ヒラメや淡水魚も危険

 アニサキスと同じく、ここ数年、増えている寄生虫が「クドア・セプテンプンクタータ」だ。

 主に養殖ヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫で、厚労省の「食中毒事件一覧速報」では、今年1~8月の期間に6件、計55人の感染が報告されている。

「クドアがどのようにしてヒラメに寄生するのかはまだハッキリと分かってはいませんが、もともとクドアに寄生している稚魚を養殖してしまったり、与えるエサにいるのではないかとみられています。肉眼で判別することは難しく、食べるとすぐに腹痛や下痢、嘔吐を起こします。ただ、症状は比較的軽度な場合が多く、数時間で改善します。クドアも、75度以上で5分以上加熱するか、マイナス20度で4時間以上の冷凍で死滅します」

 予防を徹底するなら、やはりヒラメの刺し身は避けるべきだろう。

 淡水魚では、アユやシラウオに寄生する横川吸虫にも気をつけたい。

「人間の小腸に入り込み、2~3カ月ほどで成虫に成長します。寄生された数が少なければ、自覚症状はほとんどありませんが、数が増えると下痢や腹痛を起こしたり、慢性カタル性腸炎の原因になる。食欲不振でやせ細ってしまう人もいる。検便で卵が見つかり、調べてみたら小腸に大量の横川吸虫が寄生していたというケースもあります」

 アユは、しっかり火を通し、シラウオの躍り食いはガマンした方がいい。