これで痛みを取り除く

胃・十二指腸潰瘍 市販薬を3日飲んで効果なければ病院へ

 みぞおちを中心に、上腹部にシクシクと持続的な痛みが表れる。潰瘍ができる原因は、胃や十二指腸の壁を胃酸から保護する防御機能が低下するためだ。東京逓信病院・消化器内科の橋本直明部長が言う。

「最大の原因は、胃粘膜に生息するピロリ菌の感染です。十二指腸潰瘍では90%以上、胃潰瘍の70~80%の患者さんがピロリ菌に感染しているといわれます。ピロリ菌によって粘膜に慢性的な炎症が起こるのです」

 さらに、次の5つの要因が重複することでも発症率が高まるという。

①アルコール②たばこ③カフェイン④非ステロイド性抗炎症薬(エヌセイド)⑤ストレス

 軽い急性潰瘍であれば市販の胃酸を抑える薬で治る場合もあるが、再発も多い。悪化すると、出血して吐血(コーヒー色の血)や下血(黒いタール便)が起こり、最悪の場合、穴があいて腹膜炎を起こす恐れもある。

「とりあえず市販薬を3日飲んでも改善しなければ受診した方がいいでしょう。病院でも胃酸を抑える内服薬で治療しますが、成分の容量が多く、効き目が違います。小さい潰瘍であれば1~2日で痛みが消えます」

 主に使われるのは、作用の違う3種類。「ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)」や「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」。それから昨年発売された新薬の「ボノプラザン」がある。

 腹部の痛みが消えても薬は飲み続ける。内視鏡で見て、潰瘍が治るまで胃酸の分泌を抑える必要があるからだ。服用期間は早くて10日、再発性は治りが遅く1カ月くらいかかる場合もあるという。

「再発を防ぐには、5大要因を減らす生活改善はもちろんですが、ピロリ菌感染があれば潰瘍が完治したあとに除菌をすすめます。除菌治療は、3種類の薬(抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬)を7日間飲み続けます」

 従来の除菌治療は、PPIと抗菌薬(2種)を組み合わせたセット薬が使われてきた。しかし、最近ではPPIの代わりにボノプラザンを組み合わせたセット薬も発売されている。

「ボノプラザンは、PPIよりも胃酸分泌抑制効果が強力で、1日通して効果が持続する特徴があります。そのため、ピロリ除菌率も従来のPPIのセット薬では75%でしたが、ボノプラザンのセット薬では除菌率が95%と向上しています」

 ピロリ菌は胃がんの原因にもなる。痛みがなくても、早めに退治しておこう。