本当は怖い!歯の病気

がん、心臓病、肺炎…死に至らしめる病は歯周病菌に通ず

医療関係者の間では常識に
医療関係者の間では常識に(C)日刊ゲンダイ

 歯周病が全身の病気に深くかかわっているのはいまや医療関係者の間では常識だ。自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

 狭心症や心筋梗塞もそのひとつ。歯周病を患う人は、健康な人に比べて1.5~2.8倍かかりやすいという研究も発表されている。全身の血管を巡る歯周病菌が、いたるところの血管内皮細胞を傷つけることで動脈硬化が進むからだ。

「動脈硬化は血管が厚く硬くなり、血管の中が狭くなる病気です。かつてはコレステロールなど食べ物が原因といわれましたが、いまは細菌などが血管に侵入し、血管内皮にとりついてサイトカインを出し、血栓やプラークを作ることも原因といわれています。それがもとで心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈が狭くなったり、詰まったりするといわれています」

 心臓弁に歯周病菌が感染することで心内膜炎になる場合もある。

 肺炎は肺の中に細菌やウイルスが入ることで発症する。肺炎の中でも誤嚥性肺炎は高齢者や寝たきりの人に多い肺炎で、主に唾液が誤って肺に流れ込むことで、口の中の細菌によって引き起こされる。

「誤嚥性肺炎を起こした人の肺の中から多くの歯周病菌が発見されており、歯周病が誤嚥性肺炎の一因とみられています」

 がんも歯周病菌が引き金になるという説が浮上している。歯周病菌による炎症で正常細胞が異変をきたし、がんを発症するというのだ。

「ハーバード大学が5万人の男性を追跡調査したところ、歯周病のある人はそうでない人よりも64%も膵がんになるリスクが高かったそうです。また、食道がんの細胞の中から歯周病菌のひとつである『トレポネーマ・デンティコーラ』が高い割合で検出されたという国立がん研究センターの報告があります。英国の研究グループが歯周病歴のある男性の医療従事者を調べたところ、肺、腎臓、血液のがんに歯周病菌が関係していると結論付けています」

 認知症の6割を占めるアルツハイマー病も、歯周病が症状を悪化させることが動物実験で証明されている。

「名古屋市立大大学院、国立長寿医療研究センター、愛知学院大学の研究で、アルツハイマー病のマウスとアルツハイマー病+歯周病のマウスを比べたところ、後者の方が認知率が悪かったそうです」

 医師の間で口腔内ケアが見直されている背景には、重大病に潜む歯周病の存在があるのだ。