放置でうつ症状も…老人の貧血には怖い病気が隠れている

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 貧血にはさまざまな種類があるが、田中さんは高齢者の多くが患う鉄欠乏性貧血だった。その原因は消化管からの鉄吸収障害、薬による消化管出血などもあるが、食事での鉄分摂取不足も大きい。

 田中さんは食が細く、十数年前の交通事故で腸が傷つき機能低下していたため、肉などは控えめにしていた。

「鉄分には、肉や魚などのタンパク質に含まれ体に吸収されやすい『ヘム鉄』と、野菜や穀類に含まれて吸収されにくい『非ヘム鉄』とがあります。高齢者は『粗食が一番』という誤った考えから、ヘム鉄を取らないため、鉄不足になりやすい傾向にあります」(都内の管理栄養士)

 しかも田中さんは、非ヘム鉄の体内吸収を助けるビタミンCも不足気味だった。妻と2人暮らしの田中さんは、果物などを買っても重くて持ち帰るのが大変だったからだ。

 高齢者の貧血が怖いのは心臓の病気だけじゃない。胃がんや大腸がんなどの消化器のがんや、うつ症状や食べ物がのみ込めなくなる嚥下障害、認知症やうつ症状などにも注意が必要だ。

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