Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

小林麻央はステージ4で手術 狙いは皮膚転移の症状緩和か

左はオフィシャルサイト「KOKORO.」から/(C)日刊ゲンダイ

 乳がんが“顔”を出した状態を、医師は「花が咲く」と表現しますが、そんな生易しいものではありません。女性の象徴である乳房が目を背けたくなる状態になりかねないのです。仮にそうだとすれば、34歳と女盛りの麻央さんの心情は推して知るべしでしょう。ブログに「一時は胸や脇の状況が深刻」とサラッと記す以上につらかったはずです。

 一連のブログなどによると、麻央さんは診断当初からすでに乳がんが進行していた可能性も決してゼロではありません。その当時、手術をせず抗がん剤治療を選択したのは、すでに皮膚転移を起こすほどがんが広がり、手術ができなかったのではないでしょうか。診断時に進行乳がんで皮膚転移を起こしている割合は5%とされます。

 乳がんが“震源地”の原発巣から皮膚や肺、骨などに転移すると、全身に対して抗がん剤治療を行い、皮膚の傷口には軟膏などを塗って治療。そうやって様子を見るのが一般的ですが、傷口は肌着にくっつき、脱ぐのも痛むし、臭いもきついため、QOL(生活の質)はとても下がります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。