スマホが医療を変える

数年後には人工知能が健康アドバイスする時代に?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 スマートフォンの医療への活用が広がっています。先進的な病院では、院内でのスマホ利用が始まっています。医師やスタッフの通話とメッセージ交換だけでなく、電子カルテや検査結果の共有、CTなどの画像のチェック、手術室のライブ映像の配信などにも使われています。また、訪問看護の現場では、患者宅までの地図表示、バイタルデータの入力と履歴チェック、看護実施内容の入力などに使われています。

 医療機器の誤作動を心配する方がいるかもしれません。しかし、それは電波が2Gだったころの話。すでに2Gサービスは終了しており、いま使われている4G(LTE)の電波では、スマホを極端に近づけないかぎり、医療機器と干渉しないことが実証されています。

 我々の日常的な健康管理にも、スマホは急速に浸透しています。スマホと連動する「リストバンド型」や「腕時計型」の「活動量計」は、いまでは当たり前。「小型加速度センサー」や「心拍計」などが搭載されており、一日の消費カロリーをスマホ経由で丸ごとインターネット上のクラウドサーバーに記録できます。

 これらの変化は、ほんの1~2年の出来事です。活動量計が発売された2014年は「ウエアラブル元年」と呼ばれています。しかし、スマホ医療(スマホの保健医療への活用)は、この年に突然始まったものではありません。基本的なアイデアは1990年代に提案されていました。その後、20年間でICTが驚異の進化を遂げた結果、当時の夢がようやく実現されようとしているのです。

 しかし、我々は次の数年間に、さらに大きな変化を体験するはずです。毎日の健診チェックが自動的にできるようになりますし、そのデータに基づいて、人工知能(AI)とチャットボット(会話ロボット)が健康上のアドバイスをしてくれるようになります。

 本格的な遠隔医療や電子処方箋はすでに実現していますが、それが当たり前になっていきます。遺伝子診断の結果もスマホで簡単に確認することができますし、スマホと連動した薬剤注入器を付ければ、糖尿病や高血圧の管理が自動的にできるようになるでしょう。

 我々はいま、保健医療分野における大きなターニングポイントを迎えつつあるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。