年を取ったらクスリを見直せ

【COPD治療薬】「禁煙」で副作用が出た事例もあり要注意

 高齢者の罹患率、死亡率ともに増えている病気が「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)です。長年の喫煙習慣が主な原因の肺の生活習慣病で、日本には、40歳以上の8.6%に当たる約530万人もの患者がいるといわれ、今後も問題となる疾患です。

 激しい咳、痰、息苦しさといった症状があり、治療は主に薬物によって行います。その治療薬のひとつに、気管支を広げる作用と呼吸筋力増強の作用がある「テオフィリン製剤」があります。長年、使われている薬ですが、「使用量のコントロール」が難しい薬でもあるので注意が必要です。使用量が多すぎると、吐き気、頭痛、不眠、頻脈、けいれん、不整脈などの重篤な副作用を起こす危険があります。実際、こうした副作用が「禁煙」によって出た事例があります。テオフィリン製剤は、たばこを吸うことによって「薬がより代謝され、薬の効果が弱く」なります。つまり禁煙すると体内のテオフィリン量が多くなり、副作用が出やすくなるのです。

 この事例では、体内のテオフィリン量が過剰になったものの、「吐き気」が強く出ただけで命に別条はありませんでした。テオフィリン製剤は、禁煙にも注意しなければならないのです。

 テオフィリン製剤を服用する場合、血液検査で「体内の薬の濃度(血中濃度)」を測定しながら使用することが勧められます。しかし、テオフィリン量の測定は頻繁に行われているわけではありません。服用中に体調が悪くなった場合は、血液検査で「薬の副作用なのか」どうかを判定することができます。気になることがあれば、医師、薬剤師に相談しましょう。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。