ダイエットを科学する

「食事制限ダイエット」でやせられるのはなぜか?

 前回は米国で流行している「8時間ダイエット」と糖質制限を組み合わせて約10キロの減量に成功した、「かたやま脳外科内科クリニック」(福岡県北九州市)の片山成二院長の話を紹介した。今回はその基になる「8時間ダイエット」について説明しよう。

 8時間ダイエットは、厳しい食事制限や苦しい運動などしなくても、1日の食事を8時間以内で済ませばやせるというもの。アメリカの人気健康雑誌「メンズヘルス」元編集長のデイビッド・ジンチェンコ氏が書いた本がニューヨーク・タイムズ紙でベストセラーとして紹介され、話題を集めた。

 その理論的根拠となっているのが、米カリフォルニア州の「ソーク研究所」のサッチダナンダ・パンダ教授が2012年に米科学誌「Cell Metabolism」に発表したマウス実験だ。

 パンダ教授らの研究チームは、マウスを①24時間制限なく高脂肪食を食べられる群②高脂肪食を取れる時間を8時間に制限した群――に分けて比較した。

「18週間経過観察して比較した結果、同じカロリー摂取でも、8時間に制限されたマウスは肥満にならず運動能力が向上することが判明。肥満やメタボリックシンドロームの予防になり、これが心臓病予防などにも効果があると報告されたのです」(管理栄養士)

 続いてパンダ教授らの研究チームは、より人間に近い食事パターンでの実験を行った。総カロリーは同じで、「高果糖食」「高脂肪・高ショ糖食」「高脂肪食」「通常食」の4つにマウスをグループ分けした。そのうえで、「食事時間制限なし群」と「9時間以内食事時間制限群」とに分けて12週間観察した。

「その結果、高脂肪・高ショ糖食のマウスでは9時間以内食事時間制限群の体重増加が平均+21%、制限なし群では平均+42%となったのです。一方、高果糖食と通常食のマウスでは両者に差はなかった。食事時間制限ダイエットは、脂肪やショ糖の多い食事の場合に、より体重減少効果が大きいことが示されたのです」(同)

 冒頭の「かたやま脳外科内科クリニック」では、この8時間ダイエットの成功者は院長だけではないそうだ。高血圧や糖尿病患者などに「8・16ダイエット」を提案しているのだ。高血圧と糖尿病をもつ91歳女性がチャレンジし3キロ減に成功、体調が向上したというから驚きだ。

「私は、朝食を抜く8時間ダイエットを苦痛なく継続しています。朝食を抜くことには賛否ありますが、昼・夜でバランスの良い十分な食事を取れば健康上の問題はありません」(片山院長)