この連載で何度か触れたように、前立腺がんは他のがんに比べて穏やかなケースが少なくなく、がんがあっても治療せずに寿命をまっとうできることがあります。前立腺がん以外で亡くなった高齢者を解剖すると、寿命に影響しない前立腺がんが見つかるのはそのためです。
ですから、PSA検査で前立腺がんを早期発見できても、必ずしも慌てることはありません。治療するか、経過を見守るかの見極めがとても大切です。では、治療すべきケースはどんなときか。
前立腺がんの危険度は「超低リスク」「低リスク」「中間リスク」「高リスク」「超高リスク」の5つで判断します。経過観察が可能なのは「低リスク」以下で、その場合も定期的なPSA検査でがんの状況をチェックするのが必要です。
治療を検討するのは、一般に「中間リスク」以上で、おおむね「75歳以下」。寿命を平均寿命の80歳とすれば、診断時の年齢が若いほど寿命までの期間が長く、がんが進行する恐れがあり、治療が無難と判断するのです。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁