医師語る 「こんな病気で死にたい」

亡くなる時期がある程度予想できる「がん」で餓死が理想

石川隆俊さんは東京大学名誉教授(提供写真)

 モルヒネよりも効き目の強い薬もありますし、骨に転移したがんの激しい痛みを、注射1本でコントロールする放射性医薬品、がんの痛みに関係する神経を、アルコールなどで遮断する神経ブロックなどが開発されています。

 大抵のがんは、末期でも意外に穏やかに過ごせます。そもそも、がん細胞は正常な細胞の栄養を横取りして増殖します。その結果、がん細胞にとりつかれると全身の栄養が低下して、最後は餓死のような状態で亡くなります。餓死はある意味“自然死”ですから、老衰のように苦しみは少ないのです。

 がん患者さんのなかには「若いころ、ムチャな生活をしていたからがんになった」「自分の生き方が悪かったから、その罰ではないか」などと、精神的に自分を責める方もおられるようです。しかし、これも誤解です。

 私は長年、環境中の化学物質が引き金となるがんの研究に取り組んできました。かつては、特殊な染料、あるいは洗剤のベンゼンに触れるなど、外的要因によるがん発症がありました。しかし、いまは、ほとんどありません。

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