看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

死を前にして考えたい5つのこと

 前回は「死」を肯定的に捉えるお話をしました。今回は、日本の多死社会において、病や老いなどによって人生を終える時期「エンド・オブ・ライフ」について取り上げます。

 エンド・オブ・ライフとは、患者・家族と医療スタッフが死を意識するようになった時期から、死が差し迫った時期までのこと。年単位に及ぶ、幅のある期間です。がんだけでなく、高齢の方々もこの対象と考えられます。

 なぜ、今、エンド・オブ・ライフが重要なのか。

 それは、2025年に総人口の約30%(3人に1人)が高齢者となり、世界に先駆けて日本が確実に超高齢多死社会となることに関係しています。

 高齢であると、慢性疾患(がんを含む)を抱えて過ごす方の割合が増加します。これは、医療費の増大だけでなく、若年人口が少ない中でのケアの担い手不足、病院のベッド数の不足、在宅医療の担い手の不足など、さまざまな問題を引き起こします。

 エンド・オブ・ライフにある当事者およびその家族が、

①どんなところでどんな治療を受けたいか(または受けたくないか)

②どこで療養したいか(病院か自宅か?)

③どんな支援が必要で、だれに支援者になってほしいか

④重要なことを決定するときにはだれの意見を尊重するか(本人か家族か? 本人の意識がなかったら?)

⑤最期はどのように過ごしたいか(延命はするのか、しないのか?)

 これらについて早い段階から考えることを始め、少しずつ準備することが必要になるということです。

 よくいらっしゃるのが、葬儀やお墓は生前から決めているが、前述の5点については話し合っていなかった方です。私たち医療者は、患者さんが最期まで生活の質を保てるように、その人にとってよい死が迎えられるための必要なサポートをしますが、意思決定をするのは患者さんやそのご家族です。よくよく話し合っておくに越したことはないと思うのです。