鼻炎を招く危険も つらい鼻づまりは薬の多用で悪化する

点鼻薬を長期間、頻繁に使っていると…
点鼻薬を長期間、頻繁に使っていると…(C)日刊ゲンダイ

 急に肌寒くなってきた。これから冬にかけては鼻づまりが増える。呼吸がしづらくなってつらい上、気になって集中力が続かなくなる。しかし、だからといって鼻づまり解消のため、安易に点鼻薬を多用すると逆効果になりかねない……。

 冬に鼻づまりが増えるのは、いくつか理由がある。昼と夜の気温差や、室内と屋外の寒暖差が大きくなると、それが刺激になって鼻の粘膜の血管が広がり、むくんでしまう。こうした寒暖差アレルギーによる症状として、鼻づまりや鼻水が表れる。

 また、冬になると空気が乾燥する。鼻の粘膜は常に外気にさらされているため、鼻の粘膜からしみ出ている粘液=鼻水も乾いて、かさぶたのように鼻内にへばりつく。さらに、粘膜自体もカサカサになり、腫れると空気が通る部分が狭くなって、鼻づまりが悪化するのだ。

 冬に増える不快な鼻づまりを解消するために、手軽に使用されているのが点鼻薬だ。今はインターネットでも、一時的に強力な効果がある点鼻薬を購入できるようになったため、使ったことがある人も多いだろう。しかし、点鼻薬は使い方によって新たな症状を引き起こすというから注意したい。

 こやま薬局の企画運営部主任で、管理薬剤師の中尾隆明氏は言う。

「鼻づまりを改善する点鼻薬には、大きく分けて3つのタイプがあります。1つ目はステロイドによって炎症やアレルギーを抑えるもの。2つ目は抗ヒスタミン薬によってアレルギーを抑えるもの。3つ目が血管を収縮させることによって鼻の粘膜の腫れを解消するタイプです。市販で手軽に入手できる点鼻薬は、血管収縮剤が含まれているタイプが多い。鼻の粘膜には毛細血管が無数にあり、そこに血液が過剰にたまって充血すると、粘膜が腫れて鼻づまりを起こします。血管収縮剤が含まれているタイプの点鼻薬は、毛細血管を収縮させて充血を解消し、腫れを緩和して鼻づまりを改善するのです」

■安易に点鼻薬に頼ってはいけない

 血管収縮タイプの点鼻薬は即効性があり、すぐに鼻づまりが解消される。しかし、効くからといって頻繁に使用していると薬剤性鼻炎になり、逆に鼻づまりを悪化させてしまう。

「人間の体は、薬を繰り返し使用していると、その薬に対する抵抗性が表れ、次第に薬が効かなくなっていきます。点鼻薬も同様で、長期間使い続けているうちに効果が小さくなっていきます。効かなくなってきたからといって、頻繁かつ大量に使うようになると、今度は使用前より血管が広がって鼻の粘膜が腫れ、鼻づまりが悪化する。これが薬剤性鼻炎です」(中尾氏)

 都内のある耳鼻科では、血管収縮タイプの点鼻薬を使い過ぎた薬剤性鼻炎の患者が増えているという。

「薬剤性鼻炎の治療法は、血管収縮剤を含んだ点鼻薬の使用を完全にやめてもらうこと。多くの場合、薬を中止すると最初は鼻づまりが悪化しますが、2週間でほとんど元の状態に戻ります」(都内の耳鼻科専門医)

 一般的に、血管収縮タイプの点鼻薬は1日3回まで、2週間以上継続して使用してはいけないとされている。

「点鼻薬によって変わってくる場合もあるので、まずは薬の説明書に記載されている使用方法をしっかり守るのが基本です。ただ、副作用をより防ぐためには、1日に3回まで使用してよいとされていたとしても、その適正使用回数内で、本当に症状が酷いときにだけ使用するのが望ましいといえます」(中尾氏)

 薬でかえって鼻炎を悪化させないためには、安易に点鼻薬に頼ることは避け、購入する際は薬剤師に相談したい。

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