これで痛みを取り除く

くも膜下出血の手術前はモルヒネより強力な医療用麻薬を

 突然、ハンマーで殴られたような強烈な頭痛に襲われる「くも膜下出血」。脳の血管にコブができる脳動脈瘤が破裂して、くも膜下腔という部分に血液が流れ込み、頭蓋骨の内圧が上昇する(頭蓋内圧亢進)ことで激しい頭痛が表れる。東京都済生会中央病院・脳神経外科の淺田英穂部長が言う。

「くも膜下出血を発症する数時間~数日前に、頭部に部分的な痛みが出ることもあります。これは解離性脳動脈瘤といって、脳動脈の血管が内壁と外壁の2層に裂けることによる痛みです。椎骨動脈に起これば、後頭部に持続的な痛みが表れます」

 いずれにしても、くも膜下出血を発症したら手術で早急に出血を止めなければ命が危ない。救急搬送されても約20%の割合で病院到着前に死亡する。病院に着いても検査や手術の準備に時間がかかるので、その間、薬で痛みを抑えるという。

「痛みを取るために、モルヒネよりも強力な『ブプレノルフィン』というオピオイド(医療用麻薬)を使います。それから麻酔薬の『プロポフォール』で眠らせ、降圧剤で血圧を下げる。だいたいこの3種類の点滴をしてから手術に取りかかります」

 手術法は、開頭手術と血管内手術がある。開頭手術は、頭蓋骨に直径5~6センチの穴を開け、顕微鏡で見ながら破裂した動脈瘤の根元をクリップで挟む。血管内手術は、太ももの付け根からカテーテル(細い管)を挿入し、細くて軟らかいプラチナ製コイルを動脈瘤の中に詰めて出血を止める。

 どちらの手術を行うかは、動脈瘤の場所や形状、高齢者かどうかなどによって検討するという。

「術後も、出血した血液が吸収されてなくなるまで2週間ほど頭痛が残ります。その痛みを抑えるには、通常の消炎鎮痛薬(内服や点滴)を使います。頭蓋内圧を下げる脳圧降下薬の点滴も行います」

 手術法にかかわらず、術後は経過観察が必要になるので入院は1カ月くらいになるという。発症者全体の約30%は治療しても手足のマヒなどの後遺症が出る。後遺症がなく社会復帰するのは、約30%だ。

「経験したことのない激しい頭痛はくも膜下出血の典型症状ですが、片マヒや意識障害が典型症状の脳出血でも頭蓋内圧亢進が起こるので、頭痛を伴う場合(約10%)があります。脳卒中で頭痛が起こらないのは血栓により脳血管が詰まる脳梗塞だけです」

 通常とは違う頭痛があったら、早めに検査で鑑別してもらおう。