ダイエットを科学する

急激なダイエットは糖尿病、肝硬変、肝臓がんを招く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ダイエットをする人は「脂肪肝」に注意が必要だ。ダイエットに成功して「体が軽くなった」「寝覚めがいい」と実感する一方で、沈黙の臓器である肝臓には脂肪が蓄積され、脂肪肝になる人が多いからだ。結果、糖尿病や肝硬変、肝臓がんの発症リスクが高くなるという。

 先週放送されたNHKの情報番組「ガッテン!」の「まさか!ダイエットが引き起こす肝臓の悲劇」では、25人のダイエット成功者が紹介されたが、うち11人が検査で脂肪肝と診断された。1人は検査入院を言い渡されるほど深刻だった。なぜ、ダイエットに成功した人の肝臓は脂肪がたまりやすいのか? 松尾内科クリニック(東京・桜新町)の松尾孝俊院長が言う。

「番組でも説明されていましたが、急激なダイエットをすると食事の量が減るので、血液中に流れるエネルギー源が減少します。それを補うため、脂肪細胞や筋肉などにため込まれたエネルギー源が血液中に放出されます。おかげで体は痩せるのです。ところが肝臓はダイエットを体の飢餓状態と勘違いして、血液中に放出されたエネルギー源をため込みます。それで脂肪肝になるのです」

 専門的には「低栄養性脂肪肝」と呼ばれるもので、若い女性や拒食症の人などがなりやすいことでも知られている。

「脂肪肝になると、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になりやすいだけでなく、狭心症や心筋梗塞などの心疾患を起こしやすくなり、肝臓がんのリスクが高くなるといわれています」(松尾院長)

 また、肝臓には血液中のエネルギーをため込む以外に500種類ほどの機能がある。そのひとつが「糖分の貯蔵」で、脂肪肝になると糖分の貯蓄ができなくなり、血液中に糖分を流し込むことで糖尿病になりやすくなるという。

 では、ダイエットで肝臓にダメージを与えないためにはどうすればいいのか?

「体に飢餓状態がやってきたと勘違いさせない程度のゆっくりした体重減が必要です。月2~3キロのダイエットがベストでしょう。睡眠中は脂肪分解作用のある成長ホルモンが分泌されるため、6時間以上の睡眠を心がける。緑茶のカテキンは肝機能の指標のひとつである血清中酵素を活性化させ、NASHにも良い影響を与えるといわれています。積極的に飲むといいかもしれません。運動も大切です」(松尾院長)

 急激なダイエットは命の危険すらあることを覚えておこう。