「進行がん」や「末期がん」のことばかり取り上げてきましたが、「早期に見つけて早期に治療すれば、そんな心配をしなくてもすむのではないか」と思われる方も多いでしょう。そこで、がんを早期に見つけて早期に治療するがん検診に焦点を当てて、さまざまな視点から、さまざまな研究を紹介しながら、「実際にどうしたらいいのか」を考えてみたいと思います。
「どうしたらいいかって、がん検診を受ければいいじゃないか」「受けたほうがいいに決まっている」といった意見が大部分かもしれませんが、話はそう単純ではありません。事実、「がん検診は受けるべきではない」との意見を耳にすることもあるはずです。
最初に私の結論を言ってしまうと、「受けるべきだ」という意見も「受けないほうがいい」という意見もどちらも正しく、どちらも間違っています。別の言い方をすれば、がん検診を受けたほうがいいかどうかは、「どちらとも言えない」あるいは「どちらでもいい」というところでしょうか。それでは身もフタもないと言われるかもしれませんが、現実はそうしたハッキリしないものなのです。
どういうことでしょうか。簡単に言えば、がん検診には“害”があるからです。受けたほうがいいというためには、単に早期発見によって治癒できる人がいるというだけでなく、「その効果が害を上回るほど大きいものである」ことが必要です。しかし、害を上回る効果があるかどうかを示すことは案外困難なことです。
さらに、害を上回る効果があることが示されたとしても、それはあくまで集団として示されるだけで、個別の人でどうかはまた別問題です。検診を受けてがんが見つかって助かる人がいて、助かる人のほうが多いとしても、その治療の副作用で死んでしまう人も少数であってもいるということです。難しいものです。
数字が語る医療の真実