看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

腹水は日常生活の工夫で対応する

 今回は、「がん性腹水」についてです。肝転移やがん性腹膜炎に伴って腹部に水がたまってしまうことをいいます。

 腹水がたまると、「お腹が張ってつらい」「ズボンが苦しくてはけない」「歩きにくい」「胃が圧迫されてたくさん食べることができない」「外見的に気になってしまう」など、日常生活に支障が出ます。また、食べられず、動けないので体力が落ちるといった2次的な問題も多く、対処が必要な病態です。

 一般的には、水分を体外に排出するために利尿剤を用います。それで効果が得られない場合には、「腹水を抜く」という選択肢があります。

「腹水を抜いたら弱る」と昔から言われており、抵抗がある方も多いのですが、今は「腹水ろ過濃縮再静注法(CART:カート)」という方法があります。

 腹水処理システムで、抜いた腹水中の細胞や細菌をろ過装置で取り除き、タンパクに濃縮したものを点滴として血液中に戻すのです。それによって、腹水を抜く過程で失われる栄養を体に還元できるのです(全ての施設で実施できるわけではありません)。

 これらの治療と併用してほしいのが日常生活の工夫です。

 お腹が張っていると起き上がりや立ち上がりが難しくなるので、横向きの姿勢で腕の力を使って起き上がったり、イスや便座を補高して座面を高くして立ち上がりやすくする工夫ができます。

 患者さんが最も困る「浴槽内からの立ち上がり」も、浴槽内に小さな椅子を入れると効果的です。

 体のバランスを取りやすくする足にフィットした靴を履いたり、腹水で伸展した皮膚を保護する保湿クリームの使用も大切です。

 日常生活でできる工夫は、かかりつけの看護師やリハビリ担当の方などにアドバイスをもらえますので、相談をしてみましょう。