有名病院 この診療科のイチ押し治療

【顎口腔外傷】東京西徳洲会病院・歯科口腔外科(昭島市)

佐野次夫部長が全歯科医を統帥
佐野次夫部長が全歯科医を統帥(C)日刊ゲンダイ
医科とは別に夜間当直を置き24時間体制で対応

 徳洲会グループの歯科口腔外科の総本山的な役割を果たしている同科は、全国でも珍しい「歯科口腔外科救急」の機能をもっている。

 主な対象疾患は、口腔がん、重篤な顎部の炎症(歯性感染症による骨炎や頚部蜂窩織炎など)、交通事故などで顎や歯が破壊された顎口腔領域の外傷など。ほとんどが一般歯科からの紹介患者や救急車で搬送されてくる患者だ。副院長で徳洲会グループの全歯科医師を統括する立場にある佐野次夫部長(顔写真)が言う。

「当科は、医科とは別に単独で夜間の当直医を置く24時間体制です。夜間の顎口腔外傷の患者さんは、東京三多摩地区だけでなく、神奈川、埼玉、山梨などの近隣県からも救急搬送されてきます」

 同科だけでも、救急車の搬送は1日2~3台、月100台近くになる。患者にとって歯科口腔外科の救急外来には、どのようなメリットがあるのか。普通の救急科の対応と何が違うのか。

「たとえば、口腔内に大量の出血があると呼吸ができなくなる恐れがあるので、高度救命救急センターであっても気管切開をすることが多い。しかし、当科ではやりません。口腔内を熟知しているので、初期にしっかり止血ができるからです」

 顎口腔外傷は、初期治療が非常に重要になるという。それによって、その後の手術の困難さや治り具合が違ってくるからだ。同科は、特に顎関節の骨折など咀嚼のカナメとなる顎や噛み合わせ部分の手術を得意とする。

 顎の中央と両側の顎関節が折れている症例では、通常、手術に3~4時間要するが、同科は1時間半ほどでやってのける。しかも、出血も少量で抑えられるという。

「口腔内は細菌が多く感染しやすいので、手術は腫れがひいてから(1週間後くらい)行います。その前に、初期治療で骨折した部分を針金などで元に近い状態に的確に固定しておくと、手術時に整復しやすくなります。このような治療に慣れている施設は全国的にも少ないのです」

 歯が折れていれば、顎が治った後にインプラント(自費)を使って短期間で修復する。1回法インプラントを使用するので、その場で仮歯が入れられ、2カ月で本歯が入る。骨折した顎にインプラントを入れるのも経験豊富な施設でないと難しいという。

 これらの一連の治療がうまくいかず、少しでも噛み合わせにズレがあれば、咀嚼の異常、肩こり、腕が上がらないなどの後遺症が出る。それだけ緻密で正確な治療が求められるのだ。

「噛み合わせに関係する外傷は、形態的修復と機能的修復の両面を確実にしっかり治さなくてはいけません。ですから、私たちは『外傷口腔外科』という考えで診療に当たっています。これらの治療技術は大学では学ばないので、部下には徹底的に教育しています」

 昨年行った639件の手術のうち、約半数近くが顎口腔外傷の手術。

 同病院の病床は、常時40床弱が同科の入院患者で占められているという。

■データ
徳洲会グループの59番目の病院(2005年9月開設)
◆スタッフ数=医師10人
◆年間初診患者数(2015年)=3223人
◆年間総手術数(同)=639件