スマホが医療を変える

遠隔医療は実現するか

「必ず対面診療を行う」
「必ず対面診療を行う」(C)日刊ゲンダイ

 これまでは、ウエアラブル機器、チャットボット、人工知能など、医師をほとんど介さないスマホ医療ばかり紹介してきました。しかし、スマホを利用して、医師が患者を診察する「遠隔医療」も注目を集めています。遠隔医療をサービスとして提供する会社も出始めてきました。

 もともと離島や僻地などの患者に対してのみ認められてきたのですが、厚生労働省が昨年、都会の患者でも、一定の条件を満たせば遠隔医療を認める通達を出したことから、一気に医療業界から注目されるようになったのです。

 一定の条件とは「必ず対面診療を行う」というものです。日本の法律では、医療は医師と患者が相対して行うことを前提としています。そのため遠隔医療においても、少なくとも初診時は対面診療を行うことと、慢性疾患の長期治療に関しては、対面診療をバランス良く組み込むことが要求されています。

■法律的なハードルは低い

 一方、現在サービスが行われている遠隔医療は、正しくは「遠隔医療相談」です。スマホやPCを使って、好きな時間に、登録されている医師を自由に選ぶことができます。相談を通して、正式な(健康保険が利く)患者になってほしいという狙いがあります。特に軽症の慢性患者は、医師にとっていいお得意になります。

 もちろん、本格的な遠隔医療に向けた動きもあります。スマホに接続できる小型超音波診断装置や心電計などが実用化されており、すでに海外で使われています。スマホのカメラを眼底鏡や耳鏡に変身させる特殊レンズも開発されています。患者が操作するのではなく、地域の看護師らが患者宅を訪れ、遠隔地の医師と相談しながら、検査や簡単な治療、クスリの処方などを行うことを想定しています。

 このような遠隔医療なら、日本でも法律的なハードルは低そうです。すでに訪問看護は当たり前になっていますから、看護師に機器の操作を許可するだけで済みます。また、看護師は採血も行えるので、小型検査装置を使って、その場で血液検査を行うことも可能になるでしょう。

 今後の超高齢社会を乗り切るためには、患者宅を病院代わりに活用するしかありません。スマホの遠隔医療は、そのための切り札にもなるはずです。