年を取ったらクスリを見直せ

血圧の薬は年とともに替えること

「高血圧」は加齢とともに増加し、前期高齢者(65~74歳)の66%、後期高齢者(75歳以上)の80%が罹患しているという報告があります。高血圧は、心臓病や脳卒中などの最も重要な危険因子のひとつですので、放置してはいけません。

 高血圧の原因は、塩分の取り過ぎ、ストレス、運動不足、肥満、加齢、ホルモン異常などが考えられますが、原因不明のケースも多くあります。塩分の制限や運動、体重を落とすなどの対策で血圧が下がることもありますが、それだけでは下がらず、薬による治療が行われるケースが多いようです。

 血圧を下げる降圧薬には、非常に多くの種類があります。その中で「短時間作用型ニフェジピン」は、高齢者において慎重な投与が必要で、原則としては使用されない薬です。

 ニフェジピンは、血管を広げる作用によって血圧を下げる薬です。作用が短い「短時間作用型」と「長時間作用型」に分類されますが、短時間作用型には「過度の血圧低下や頻脈」の副作用があります。

 実際、ニフェジピンを服用されていた患者さんが、血圧が下がりすぎてショック症状に陥った例があります。トイレで倒れているところを家族が発見したそうです。幸い、搬送後の病院で適切な処置が行われ、一命を取り留めました。このように、過剰な降圧は、脳や心臓などの血流を低下させる危険性があるため、注意が必要なのです。

「アダラートカプセル」などの「短時間作用型ニフェジピン」を常時服用している方は、年齢や状況に応じて「長時間作用型ニフェジピン」への変更が勧められます。不安があれば、医師や薬剤師に相談してください。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。