これで痛みを取り除く

慢性硬膜下血腫はロキソニンなどで痛みを抑えて翌日手術

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 転んだりして頭を打ち、1~2カ月して頭痛が表れてきたら「慢性硬膜下血腫」を疑った方がいい。ただし、ちょっとした軽い打撲でも起こるので、本人は頭を打ったことを覚えていないケースも多い。「東京都済生会中央病院」脳神経外科の淺田英穂部長が言う。

「頭部の打撲により、頭蓋骨の下にある硬膜の血管から出血をして、硬膜とくも膜の間に徐々に血がたまる(血腫)のです。最初は頭重感から始まり、血腫が大きくなるにつれて脳を圧迫して頭痛がひどくなっていきます」

 徐々に進行し、頭痛の他に「悪心」「吐き気」「片マヒ」「失語症」なども表れ、「記憶力低下」「尿失禁」「歩行障害」などの精神症状も伴ってくるという。

 ただし、脳が萎縮している高齢者の場合は精神症状が主症状になる。認知症に似た症状が急に進行するようなら、慢性硬膜下血腫の可能性がある。

「血腫があるかどうかは、CT検査をやればすぐに診断できます。頭痛に対しては、通常の消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)を使って痛みを抑え、翌日には血腫を取り除く手術を行います」

 頭の手術といっても意外と簡単。血腫のある部分の髪の毛をそり、頭蓋骨に1カ所、直径1センチほどの穴をあけ、カテーテル(細い管)を使って血腫を除去、生理食塩水で洗浄する。そして、ドレーン(血液を排出するための管)を留置するだけ。正味30分~1時間ほどの手術だ。

「手術は局所麻酔で行うので、患者さんと話をすることもできます。ドレーン留置は術後1日くらい。頭痛や片マヒなどの症状は、手術直後から数日内にはまったくなくなります。術後の後遺症もありません」

 入院は1週間前後、再度CT検査で血腫がないことを確認して退院だ。術後の再発率は5~10%だという。

 ただし、受診が遅れて意識障害や脳ヘルニアを伴っている場合には緊急手術が必要になる。放置したままだと、血腫が増大して脳ヘルニアで死亡する危険性があるので、あなどれない。

「発症原因の9割は頭部打撲ですが、残り1割は原因がはっきりわかりません。脳梗塞や心筋梗塞などの予防薬で、抗血小板薬や抗凝固薬を常用している人は発症しやすいので十分注意する必要があります」

 酒を飲み過ぎて、酔っぱらって転倒することはよくあること。ただし、この病気は頭を打った直後はCT検査などをしても異常が出ない。