予備軍は要注意「たかが風邪」の油断が糖尿病の引き金に

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 冷え込む日が多くなり、風邪をひいてしまったという人も多いだろう。たかが風邪だとタカをくくっていてはいけない。放置しておくと、糖尿病の“引き金”を引いてしまうケースがあるのだ。

 肥満などの生活習慣が原因になる2型糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなったり、不足したりすることで高血糖の状態が続く病気だ。放置しておくとさまざまな合併症を招き、網膜症で失明したり、腎症で人工透析になったり、神経障害で足を切断しなければならないケースもある。心筋梗塞、脳卒中、がんなどの命に関わる病気にもかかりやすくなる。

 厚労省の推計では、このままだと数年後に糖尿病を発症する可能性が高い「糖尿病予備群」が約1100万人いるといわれている。空腹時血糖値が「110㎎/dl」、HbA1cが「5.4~6.4%前後」の人が予備群に該当するが、本人が気づいていなかったり、まだ自分は大丈夫だと甘く考えている人も少なくない。

 そうした“予備群”にとって、風邪は軽く考えてはいけない病気だ。糖尿病専門医で「しんクリニック」院長の辛浩基氏が言う。

「風邪をひいたことがきっかけで、糖尿病を発症する患者さんがいるのです。風邪をひくと、それだけで血糖値は上昇します。風邪で起こる体内の炎症によって、筋肉や臓器が持っている血中のブドウ糖を取り込んで処理する能力が低くなります。つまり、インスリンの効きが悪くなって血糖値が上がるのです。高血糖の状態を気づかずに放置していたり、糖尿病予備群の人は、風邪がきっかけで一気に糖尿病を発症する可能性があります」

■炎症や脱水が血糖を上げる

 また、風邪による発熱も、血糖状態を悪化させる。人間は、発熱すると発汗して体温を下げようとする。37度程度の発熱で約1リットル、38度程度では約1.5リットルの水分が失われるといわれる。そのため、しっかり水分補給しないと脱水状態になってしまう。

「脱水状態になると、血液中の水分が失われ、血液の成分が濃くなります。その分、血糖値が上昇するのです。また、通常であれば高血糖になると血液中の余分なブドウ糖は尿の中に排泄され、尿と一緒に体外に排出されます。しかし、脱水状態で尿の量が減ってしまうとブドウ糖も排出されないので、血糖が上がってしまうのです」(辛院長)

 たかが風邪だと甘く見て症状を長引かせてしまうと、糖尿病につながる危険があるのだ。

 風邪の症状を緩和させるために服用される薬にも注意が必要だ。

 たとえば、せき止め薬の成分である「メチルエフェドリン」には、血糖値を上昇させる作用があり、糖代謝に異常をもたらす。メチルエフェドリンは、漢方薬でせき止めの成分として使われている「麻黄」という生薬にも含まれている。麻黄は「葛根湯」などの漢方薬に使われている。糖尿病患者はもちろん、糖尿病予備群や高血糖を放置している人は、うかつに飲まないほうがいい。

「アレルギーによる鼻水などの症状を改善させる際に使われるステロイド薬も、血糖を悪化させるケースがあります。ステロイド薬の主成分は『グルココルチコイド』というインスリン拮抗ホルモンで、インスリンの分泌を抑えたり、インスリンに対する感受性を低下させます。つまり、インスリンの働きを阻害して、血糖値を上昇させてしまうのです」(辛院長)

 まずは、自分の血糖値をしっかり把握すること。そのうえで血糖が高めの人は、風邪はしっかり対策したい。

関連記事