医師語る 「こんな病気で死にたい」

専門である肝臓がんなら受け入れられるかもしれない

同業の妻には「告知しないで」と話している(C)日刊ゲンダイ

 その中で、肝臓がんの患者さんは食事も取れます。最後は昏睡になるため、最後の最後まで苦しむことは少なく、安らかに眠るように逝ってしまいます。肝臓が働かなくなると、アンモニアという毒素を肝臓が処理しきれなくなり、脳の活動が低下してしまうからです。意識がもうろうとしますので、痛みや死への恐怖は少なくなると思います。ですから私自身、何かのがんになるのなら、肝臓がんがいいかなと考えています。

 学生時代、今は亡くなられた作家の渡辺淳一氏の著書をよく読みました。彼のエッセーで非常に共感を覚えたものがあります。渡辺氏が「どう死にたいか」について述べているのですが、ウイスキーを飲み、雪原にバタンとあおむけに倒れ、降りゆく雪に酒で火照った頬を冷やされながら、次第に意識を失って死んでいきたいというのです。

 痛い、苦しい、つらいといったマイナスの感情より、「気持ちいい」というプラスの感情が先に立つ表現に、私にとっても理想的だなぁと、当時思いました。「肝臓がんなら受け入れられるかもしれない」という話とも通じていて、私もできることなら、痛みや呼吸困難などで苦しまないで楽に逝きたいと思っています。

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