有名病院 この診療科のイチ押し治療

【不明熱感染症外来】東京高輪病院/感染症内科・総合内科

右は感染症専門医の岡秀昭部長
右は感染症専門医の岡秀昭部長(C)日刊ゲンダイ
初診は1人30分以上 徹底的に聞き込む

 大使館や有名ホテルが多く、羽田空港へ向かうターミナル駅にも近い東京・高輪。同院は運営母体が替わった2年前、地域に合った医療を目指して、輸入感染症などにも対応できるようにと、感染症内科を総合内科に併設。その中の特殊外来が「不明熱感染症外来」だ。感染症専門医の岡秀昭部長(顔写真)が言う。

「インフルエンザや肺炎などのよくある病気の発熱は、治療すればその多くは治ります。“不明熱”とは、一般的には原因がはっきり分からない3週間以上続く発熱のことをいいます。ですから、患者さんが病院に行っても診断がつかない発熱の原因を見つけることが同外来の役割になります」

 不明熱の原因で多いのは、感染症だと「結核」や「感染性心内膜炎」など。非感染症であれば「リウマチや血管炎を代表とする膠原病」、がんでは「悪性リンパ腫」など、その他にも内分泌異常や薬剤アレルギーなどもある。

「結核でも、全体の3割は肺以外の臓器が侵される肺外結核が占めます。呼吸器内科の医師以外は結核の診断に慣れていませんので、肺以外に結核が発生すると診断が遅れる傾向があります。化膿性脊椎炎では発熱と腰痛が出るので、内科へ行くと“腰痛があるから整形外科へ行ってくれ”と言われ、整形外科へ行くと“熱があるから内科へ行ってくれ”と言われ、患者さんは困ってしまうのです」

 同外来を訪れる患者は、他院からの診断困難例の紹介患者と他院での診断治療に不安を持つ患者の割合が半々。不明熱の診療は問診が重要になるので、初診は1人30分以上の時間をかけるという。

■常に流行病の発生状況をチェック

「原因を探るのは、ごまんとある飲食店の中からおいしい店を探すのと似ています。発熱以外に症状はあるか、仕事は、どんなものを食べているか、海外へ行ったか、同居者の様子、ペットを飼っていないかなど。あらゆることを徹底的に聞き取って、病因を絞り込んでいきます。皮疹や腫れなどの症状を本人が気づいていない場合があるので、頭のてっぺんから足先まで、全身も診ます」

 同科では国内外問わず、常に流行病の発生状況をチェックしている。たとえば軽症ではインフルエンザと区別がつかないレプトスピラ症という病気がある。ネズミの尿にいる菌が原因となり、日本では本州での発症はごくわずか。ある中年男性が家族旅行で沖縄に行き、川で泳いだことがヒントになり、感染が判明した症例がある。都市部の一般内科では、まず気づくことは少ないという。

 医師から出された薬が発熱の原因になる場合もある。はっきり診断がつかないのに「とりあえず抗生物質を出しておきましょう」と言われたら要注意。抗てんかん薬、不整脈の薬、胃薬などでも“薬剤熱”が出る可能性があるという。

「不明熱では診断がつかないうちに『抗生物質』や『ステロイド』を処方しないのが鉄則です。使うと、いったん熱が下がるので症状をマスクしてしまいますが、必ずしも治癒しません。薬剤アレルギーで皮疹や下痢が出た場合には、ノイズとなって本当の診断をじゃまします。発熱で医師が納得いく説明もなしに抗生物質をコロコロ替えるようなら、感染症専門医のいる病院を受診するべきです」

<データ>
元せんぽ東京高輪病院。2014年から独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)へ運営が移行。
◆スタッフ数=医師8人(うち同外来担当3人)
◆年間初診患者数(2015年度)=624人
◆診療日=月・水・金(予約制)