年を取ったらクスリを見直せ

消炎鎮痛薬は腎臓に負担がかかる

 腎臓は不要な物質を「体外へ排泄する」重要な臓器です。体内に入った薬を排泄するのも腎臓の役割です。高齢者は腎臓の機能が低下しやすいため、薬を使用する際は特に注意が必要です。

 足腰の痛みなど、痛み止めの「消炎鎮痛薬」を服用している方が多くいらっしゃいます。消炎鎮痛薬は「胃に負担をかけるため、空腹のときに飲んではいけない」と聞いたことがあると思いますが、胃だけでなく、腎機能を低下させる危険性があります。

 脱水などによって「腎臓の血流量」が少なくなると、血管を拡張させる「プロスタグランジン」の産生が腎臓で増加します。このときに消炎鎮痛薬を使用していると、プロスタグランジンの産生が低下し、腎臓の血流が悪化してしまいます。服用後、数時間でこうした変化が起こりますが、服用を中止すると、徐々に元の状態に回復します。

 しかし、消炎鎮痛薬を継続して腎臓に負担をかけ続けると、「慢性的な腎機能低下」に陥ります。消炎鎮痛薬は、長期間の使用や常用は避け、使用する場合は必要最低限の量にとどめるべきです。

 実際、虫歯の治療後に処方された消炎鎮痛薬を服用後、腎機能が低下した患者さんがいます。服用3日後、全身の強いだるさ、尿量の著しい減少とともに「腎機能低下(急性腎不全の疑い)」が起こりました。幸い、生理食塩水の点滴と服薬の中止のみで、1週間後には正常値に戻りましたが、そのまま悪化してしまう危険もありました。この事例では、むし歯による痛みで「食事や水分の摂取量が少なくなっていたこと」もひとつの原因だと考えられています。

 消炎鎮痛薬を服用後、「むくみ、尿量の減少、だるさ、食欲不振、吐き気」などが見られた場合には、すぐに医師や薬剤師に連絡してください。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。