独白 愉快な“病人”たち

映画監督・俳優の佐野和宏さん 下咽頭がんから復帰まで3年

佐野和宏さん(C)日刊ゲンダイ

 声が出なくてもどうにかなるもんですよ。息に近い声と口と身ぶりで近くにいる人には大抵伝わるし、遠くにいる人には、近くにいる人に頼めば指示が出せます。

 がんは僕に「自分の愚かさ」に目を向けさせてくれましたね。怠けて後回しにしていたことがこんなにある、と気づかせてくれた。

 僕にとって、生きる希望、やり残していることは「映画」。スタインベックの「二十日鼠と人間」、谷崎潤一郎の「少年」、オリジナル作品、まだまだ映像化したいものがたくさんある。これからどんどん吐き出していきたいと思います。(聞き手・岩渕景子)

▽さの・かずひろ 1956年、静岡県生まれ。明治大学在学中に松井良彦や石井聰互らと出会い俳優デビュー。石井聰亙監督の「狂い咲きサンダーロード」等出演。89年「監禁 ワイセツな前戯」でピンク映画監督デビュー、脚本・監督・主演をこなし、「ピンク四天王」のひとりと呼ばれる。10月29日から新宿K'sシネマほかで主演作「秋の理由」が公開。

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