受診までの「応急処置」

【顎の痛み】親知らずの感染症と三叉神経痛に市販薬は効かない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 顎に痛みが表れたら、いくつか考えられる病気がある。東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックの新谷悟院長は「歯ぎしりをする人であれば、『顎関節症』の可能性があります」と言う。

「ある日突然、口が開かなくなる。口を開けようとすると、耳の前の顎関節が痛い。口が思うように開閉できなくなるのが症状の特徴です」

 原因は、就寝中の「歯ぎしり」や日常的な「食いしばり」のクセ、「ストレス」などが関係して、顎関節のクッションの役割をしている関節円板が詰まって開口障害を起こす。この場合、とりあえず口を開けずに安静にすることが肝心という。

「無理に開けようとして、間違った方向で開けると悪化させる恐れがあります。自然に症状が軽くなったり、治ることもあるので、あわてずに受診してください」

 顎関節の痛みは市販の鎮痛薬でも有効だが、口が開かなければ薬も飲めない。飲食できなければ受診しよう。

 顎や頬が腫れて痛い場合には、「智歯(ちし)周囲炎」が考えられるという。親知らずが細菌感染を起こす病気だ。

「かなり腫れて、歯茎からウミも出ます。ただ、親知らずが完全に埋まっていると、本人は親知らずがあることが分かっていません。それで市販の鎮痛薬などを飲んでいて悪化させてしまうのです」

 化膿しているので、化膿止めの薬(抗生物質)を飲まなければ腫れは引かない。しかし、市販の化膿止めの薬は塗り薬しかない。腫れている部分は熱を持つが、氷などで冷やすと腫れが引きにくくなるので冷やしたりせず、早めに受診しよう。

「抗生物質を使えば、3日くらいで腫れが引きます。その後に親知らずを抜歯します」

 下顎から頬にかけて、ビリビリと電気が走るような鋭い痛みが出る病気もある。顔の感覚をつかさどっている三叉神経に沿って発作性の電撃痛が起こる三叉神経痛だ。

「三叉神経は目の上や下にも走っていますが、顎の痛みとして感じる人が多い。発作は顔の一部を触ったり、冷気に触れただけでも起こるので、冬の朝、顔を洗うときなどにビリッとくるのです」

 神経性疼痛なので、これも市販の鎮痛薬はまったく効かない。顔をあまり刺激しないように、早めに受診した方がいい。

「治療薬は歯科口腔外科でも出せますが、三叉神経痛は脳の病気が関係する場合もあるので、脳神経外科や神経内科のある総合病院を受診した方がいいでしょう」