当事者たちが明かす「医療のウラ側」

3年ぶりに確認された「サナダムシ」

 今年8月、3年ぶりに「アジア条虫症」が千葉県内で確認されました。

 患者さんは千葉県成田市の40歳の男性で、飲食店の経営者です。豚の生レバーを日常的に食べていたとのことですが、海外渡航歴はなく、国内感染と考えられています。

「アジア条虫症」は台湾、韓国、中国、インドネシア、ベトナムなどのアジア諸国で報告されているサナダムシの一種です。幼虫は主に豚の肝臓に寄生し、レバ刺しを食べるなどして人に感染します。人の小腸で成長し、2~3カ月ほどで成虫となります。成虫は頭と1000ほどに分かれた「片節」からなり、全長が3~6メートルに達します。

 腹痛や下痢などの症状はないものの、片節がちぎれて便と一緒に排出されたり、仕事中、睡眠中、セックスをしているときなど、時と場所を選ばず肛門から這い出てきます。そのときの不快感は大変なものです。這い出してきた片節がパンツの中で乾燥し、チクチクとお尻に刺さって痛んだとの報告もあります。

 日本では2013年を最後に報告されていませんでしたが、今回、確認されたことで日本に定着している可能性が高くなりました。薬がよく効きますが、注意が必要です。

 すでに、豚レバーの生食は食中毒の危険があるため12年に厚労省から注意喚起が、15年6月半ばから食品衛生法改正で禁止になっています。“裏メニュー”などといわれて出されたとしても食べてはいけません。

 ただ、気になるのは「アジア条虫症」は感染症法が対象とする病気ではなく、報告義務がないことです。感染経路を明らかにしたり、再発防止をしっかりできる状況ではありません。

 観光立国を打ち出している日本は、出入国者が飛躍的に伸び、食材の国際化も著しい。にもかかわらず、法律が整っていないことは心配でなりません。