薬服用者も必読 ぐっすり眠るための「正しい睡眠知識」

不眠は仕事のパフォーマンスも下げる
不眠は仕事のパフォーマンスも下げる(C)日刊ゲンダイ

 5人に1人が不眠の悩みを抱えているといわれている。しかし、正しい知識に基づいて「眠り方」を変えるだけで、ぐっすり眠れる人は多いという。

「睡眠薬を処方されている患者さんには、“本来は睡眠薬が不要だったのに”という人がかなりいます」

 こう指摘するのは、東京女子医大東医療センター精神科の山田和男教授。彼らに必要なのは「睡眠衛生指導」だという。間違った睡眠の知識が、良質な睡眠を妨げているケースが多いので、問題点を見つけ、改めていくのだ。

 ところが、この睡眠衛生指導はあまり行われていない。なぜなら、手間も時間もかかるため、時間に追われる医師には対応困難。病院側から見ても、睡眠衛生指導は診療報酬がつかないので積極的に取り組まない。結果、「では、お薬を出しておきましょう」と安易に睡眠薬を処方される展開になってしまう。

「睡眠薬の継続使用は、依存症を招きます。あまりに安易に処方されるため、そのリスクを認識していない患者さんは多いです」

 良質な睡眠を手に入れるために、知っておくべきことは何か?

★60代は「5時間睡眠」

「加齢とともに必要な睡眠時間は減ります。20代なら8時間は必要ですが、40~50代で5~6時間、60代以上なら5時間もあれば十分です」

 ところがそう考えない人は多く、「眠れない」と訴える患者の大半が「8時間睡眠」を理想とし、目標としている。

「8時間以上の睡眠じゃないと駄目な高齢者がいたら、逆に、健康状態に問題があるのではないかと疑います」

★「起きたい時間」から逆算して寝る

 40~50代で必要な睡眠時間は5~6時間。朝7時に起きたいなら、逆算して深夜1~2時に床につくといい。

「早朝に目が覚める人は、床に入る時刻が早すぎるのかもしれません」

★日中の過ごし方が夜に影響

「特に60代の定年退職した人で眠れない人の話を聞くと、日中ゆったり過ごしすぎなうえ、布団に早く入りすぎ。睡眠は日中の体の疲労感を癒やすもの。日がな一日テレビをぼーっと見ていたら、夜眠れなくても仕方がありません」

 体内時計の調整に関係する太陽の光を存分に浴び、体を動かす。それが心地よい疲労となり、良質な眠りを誘う。

★横になるだけでもOK

「眠らなくても、横になっているだけで睡眠の6割くらいの効果が得られるといわれています」

“眠れないから睡眠薬を飲もう”となる前に、“横になるだけでいいんだ”と考えよう。

★寝だめをしない

 体内時計のリズムがずれ、月曜日以降の睡眠の質が下がる。

「起きる時間は休日も一定に。睡眠不足なら、昼間に15分程度眠る」

 山田教授は「睡眠は『借金』はできるが、『貯金』はできない」という格言を挙げる。「明日から忙しくて短時間睡眠が予想されるので今日はたくさん寝ておこう」としても、逆にその後の睡眠の質が悪くなり、うまくいかないという意味だ。

★病気が原因の不眠かチェック

「不眠の原因に、うつ病や認知症がある可能性があります」

 かつては「睡眠薬の継続服用は認知症のリスクを高める」といわれていた。実際に研究でも、睡眠薬を長期間服用している人は、そうでない人より認知症が多かった。

 しかし近年、「認知症の症状として不眠が出るのであって、睡眠薬の影響ではない」という見方も出ている。結論はまだ出ていないものの、もし認知症による不眠なら、睡眠薬をダラダラ服用しても意味がない。

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