「粗食がいい」は誤解 がんは賢く食べて抑える時代へ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 膵がんや胃がん、卵巣がんなどは悪液質になりやすいが、乳がんなどはそうでもないという。治療はどうなっているのか?

「①食欲維持②サイトカインストームの是正③筋肉の維持、が基本です。私たちが研究しているのは①で、LIF高値によって起こっているがん悪液質は、モデルラットでは六君子湯と呼ばれる漢方が有効であることを見いだしました。海外では食欲を増進させる薬剤として、マリフアナやサリドマイドを用いた研究も行われています。最近は食欲亢進ホルモンであるグレリンと同じ働きをする新薬開発も注目です」

 今年4月には悪液質の背景に、通常の脂肪組織から褐色脂肪組織と呼ばれる特殊な脂肪組織への急速な移行があるのではないか、とのスペイン国立がんセンターの研究が発表された。褐色脂肪細胞は脂肪を燃焼し熱に変える働きがある。

「これは新しい視点です。筋肉が急速に失われるのは老化によるサルコペニアも同じ。最近は老年学会などとの共同研究も進んでいます。いまや悪液質の研究は世界的な重大テーマになっています」

 がんは殺さずに共生する時代は目の前だ。

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