スマホが医療を変える

病気の治療はできるのか?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 注射のほか、体に装着して自動的にインスリンを注入してくれる「インスリンポンプ」がすでに広く使われているのですが、これらの治療法には、2つの重大な欠点があります。血糖値のモニタリングと低血糖対策が、自動的にできないことです。

 インスリンには血糖値を下げる作用があるのですが、投与量や体調によって下がりすぎ意識障害や失神を起こすことがあります。

■慢性疼痛や人口膵臓との接続も

 健康な膵臓は血糖値を感知して、下がってくると「グルカゴン」と呼ばれる血糖値を上げるホルモンを分泌します。しかし、1型患者の膵臓はグルカゴンを分泌する力も弱いため、低血糖になりやすいのです。

 人工膵臓は血糖値を常時モニターして、高くなればインスリンを、低くなればグルカゴンを注入する機能を備えた装置です。開発中の人工膵臓は、スマホにデータを自動的に転送し、専用アプリで状態を常にモニターできるようになっています。また異常があれば、病院や医師に状況を自動配信することもできます。

 すでにFDAに医療機器として申請を出している会社もあり、早ければ来年にも患者に届くはずです。ただし、日本での申請は、残念ながらまだ行われていません。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。