医者も知らない医学の新常識

流行の「マイコプラズマ肺炎」で注意すべきこと

「マイコプラズマ肺炎が流行」というニュースがありました。マイコプラズマ肺炎というのは、小学生くらいのお子さんや若い人に多い肺炎で、1カ月も続くような、しつこい咳が特徴です。典型的なものでは、熱と咳が同時くらいに出て、あまり痰が絡まない乾いた咳が表れますが、年齢が上になるにつれて、痰がらみの咳が多くなります。

「マイコプラズマ」というのは、その原因になる病原体の名前で、細菌の一種です。一般の細菌とは少し構造が違うので、特定の抗生物質しか効果がありません。軽いものは、治療しなくても治ります。

 以前は、マイコプラズマの感染症は診断が難しかったのですが、最近はインフルエンザのように喉から痰を取るだけで、その場で診断ができる検査器具が発売されて、診断がしやすくなりました。

 ただ、注意しなければならないのは、簡単な診断は確実とは言えませんし、検査が陽性でも、それが肺炎の原因とは限らないということです。

 最近の検査は病原体がいると陽性になるものです。しかし、「喘息の患者さんでは、マイコプラズマの慢性の感染がある」といった報告もあるので、実際には「肺炎の原因は別」という可能性もあるのです。

 熱と咳が強く出た時には、お医者さんを受診した方がいいのですが、同時に「マイコプラズマの診断は簡単ではない」ということも覚えておいて損はないでしょう。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。