年を取ったらクスリを見直せ

過剰摂取になりやすい「抗コリン薬」

 体の活動を調節するために、24時間働き続けているのが自律神経です。「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、その活動には「アドレナリン」や「アセチルコリン」といった体内の神経伝達物質が関与しています。

 アドレナリンが交感神経に作用すると、血管が収縮したり心臓の機能が高進し、アセチルコリンが副交感神経に作用すると、胃腸の活動が活発になったり、唾液の分泌が高進します。

 このうち、アセチルコリンの作用を邪魔する働きは「抗コリン作用」と呼ばれ、抗アレルギー薬、胃腸薬、抗うつ薬、睡眠薬、頻尿の改善薬など、数多くの薬に利用されています。

 たとえば、抗アレルギー薬である「ベナ錠」(ジフェンヒドラミン)は、アレルギーを抑える効果に加えて、抗コリン作用を併せ持ちます。そのため、副交感神経が抑制され、口の乾きや便秘などの副作用が起きやすくなります。

 さらに、抗コリン作用は、認知機能低下やせん妄などの有害事象を起こす危険があるので注意が必要です。一般的に、高齢になるにつれて疾病が多くなります。服用する薬の数も増えるため、「抗コリン作用を持つ薬」をたくさん飲むようになります。当然、副作用を起こすリスクも高くなります。

 実際に、高齢者の23%が抗コリン作用のある薬を服用している報告もあります。抗コリン作用によって記憶力の低下が起こった事例も珍しくありません。

 こうした副作用は、薬を変更すれば改善しますが、現在服用している薬を自己判断で「急に中止」すると、思わぬ体調変化が生じる危険があります。服用している薬や飲み合わせに不安があるようなら、医師や薬剤師に相談してください。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。