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競合薬登場でかえって従来薬が値上がり 珍現象の理由は?

 以前、急性アレルギー治療薬「エピペン」が9年間で5倍以上に値上がりし、大きな問題になっていることをお伝えしました。来年、そのエピペンの唯一の競合薬「アウヴィキュー(Auvi-Q)」がついに発売されることになり、話題になっています。

 エピペンと同じく太ももに自分で注射するタイプですが、エピペンのようにシリンダー型ではなく、手のひらサイズでポケットなどにすっぽり収まる長方形の箱に入っています。外側のケースを外すと、即座に音声が流れて使い方を教えてくれるので、緊急時にもスピーディーに対応しやすい。実際にアレルギーを持つ双子の兄弟が開発者であることも注目されています。

 そんな“ライバル”の登場によって、エピペンの価格も下がるのでは?と期待する声も出ていますが、喜ぶのはまだ早いという専門家も少なくありません。なぜなら、実はアウヴィキューは2013年に一度お目見えして人気を集めたものの、「正確な薬の量が注射されない恐れがある」との欠陥が見つかり、去年から販売が停止されています。問題はその値段で、発売当初の定価がすでにエピペンより1割ほど高く、逆にエピペンの価格を押し上げる原因になったとまでいわれているのです。

 アメリカの薬の値段は、製薬会社の保険会社に対するリベートなどによって、最終的な販売価格が定価よりかなり安くなることもあります。しかし、リベートの内容は公開されないうえ、さらに複雑な保険システムと絡み合って非常に分かりにくいものになっています。

 薬の値段だけでなく、医療費も健康保険料もますます上がり続けているわけですが、現行法の下では消費者にはどうすることもできない状況が続いています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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