日本が世界リード 内視鏡検査の要は「解像度」より「光」

 日本が世界をリードしている医療機器が「内視鏡」だ。近年、技術の進歩によって高画質化が進み、外科手術用の内視鏡ではすでに4K対応内視鏡(3840×2160=約829万画素)が登場。8K対応内視鏡(7680×4320=約3300万画素)の開発も進んでいる。

 技術革新は検査用の内視鏡でも進んでいる。最もなじみがあるのは「消化器内視鏡」だろう。健康診断や人間ドックなどで、食道、胃、大腸の検査をするときに使われている胃カメラや大腸カメラのことだ。

 胃がん患者が多かった日本では1950年に実用化され、ファイバースコープ、CCD、フラッシュライトなどの開発が次々に進んだ。現在は、CCDの小型化によってスコープ径をより細くすることが可能になり、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」が広く普及している。内視鏡の進化に伴って、胃がんや食道がんの早期発見が増えたという報告もある。

 もちろん画像処理技術も進歩していて、解像度もアップしてきた。さらに解像度が高い内視鏡を使えば、より正確で詳細な検査を受けられると思っている人がほとんどだろう。しかし、実際に臨床の現場で数多くの胃カメラ検査や大腸内視鏡検査を行っている消化器専門医は、必ずしもそうではないという。

「検査を行う際、カメラの解像度がいま以上にアップしても、患者さんにも医師にもプラスになるかといえば疑問です。見えすぎることで、かえって病変がわかりづらくなってしまうケースがあるからです。たとえば胃がんの場合、胃の粘膜が荒れてしまっている患者さんが多く、ただでさえ表面がでこぼこしています。細かく見えすぎると、正常な粘膜なのか、がんなのか、かえって混乱してしまうのです」

 また、解像度がアップしたことで超早期のがんを見つけることができたとしても、患者にとって有用とは限らない。

「いまの解像度の内視鏡でも、5ミリ以下の微小ながんは十分に発見できます。それ以下の大きさのがんを見つけたとしても、がんの境界をはっきりさせるためにもう少し大きくなるまで待つ場合も少なくありません。がんが小さすぎると、生検のためにひとかき組織を取っただけでがんが消えてしまうケースがあるからで、『ひとかき胃がん』といわれています。ひとかき胃がんは、その後に検査してもがんは見つからずに治ってしまいますが、患者さんの多くは『本当にがんは取り切れたのか』と戸惑います。医師に方も、がんがどこにあったのかわからなくなり、その後は短い間隔で胃カメラ検査をするしかないことも多いのです」

■病変がはっきり見やすくなる

 こうしたさまざまな要素を考えると、検査用の内視鏡は画像の解像度よりも、胃や大腸の内部を照らす「光」が重要だという。

「日本メーカーの最新の消化器内視鏡は、がんなどの病変が光って見える特殊光を使っています。『NBI』や『FICE(ファイス)』と呼ばれる機能で、これがある機種とない機種では、見えやすさや精度が大きく違ってきます」

「NBI」は、2種類の短い波長の光を当て、血管や粘膜の構造を鮮明に映し出すことができる。がんがあると微細な毛細血管が増加したり、粘膜の表面の構造が変わるため、病変が浮かび上がって見える。

「FICE」は、病変を認識する際に必要な光の波長を選んで強調したり、逆に必要のない波長を除去する画像処理を行うことができるため、病変の状態が認識しやすくなる。さらに、2種類のレーザー光を利用して、よりコントラストを強調できる機種も登場している。

 胃や大腸の内視鏡検査を受けるなら、解像度よりも光に注目だ。最新のタイプを使っているかどうか、クリニックのホームページで確認したり、電話でたずねたい。

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