医師からは「でも、甲状腺がんは進行がゆっくりですし、この大きさなら取ってしまえば大丈夫」と言われ、自分でもインターネットで調べて生命に関わることはほとんどないと知り、少しホッとしました。でも、手術の前日になってさらなる衝撃が走りました。手術の承諾書にサインをする際、「かすれ声になるリスクがあり、最悪は声が出なくなることもあります」と言われたのです。思わずサインをためらいました。
私は、歌うことが大好きで、幼い頃から何十年間、土日のどちらかは自室にこもって2時間、思いっきり歌うという習慣がありました。ドアも窓も閉め切りますが、近所でも知られた“変なおじさん”だったんです(笑い)。もちろん、しょっちゅう会社の仲間とカラオケにも行っていました。歌手でもないのに「歌えなくなったらどうしよう」と不安になるのは本当におかしな話なんですけど、すっかり頭が混乱してしまったんです。
独白 愉快な“病人”たち