交通事故死の約5倍 入浴“ヒートショック”死のワーストは

「ヒートショック」予備軍テスト
「ヒートショック」予備軍テスト(C)日刊ゲンダイ

 入浴中の心肺停止で年間1万9000人が命を落としている――。この数字がいかにスゴイことかというと、昨年の交通事故死は4117人(警察庁調べ)。実に交通事故の5倍近くの人が風呂場で亡くなっているのだ。

 風呂場が危ないのは、やはり寒くなる今の時季。死亡者数を月別で見てみると、11~3月の5カ月間に7割が集中している。先日、俳優の平幹二朗さん(享年82)も入浴中に急逝したが、当然疑われているのがヒートショックだ。ヒートショックとは、急激な温度差で血圧が上下し、心筋梗塞や脳梗塞を起こすこと。湯船に漬かったまま意識を失えば、そのまま溺死してしまう。

 では、どんな人が最も危険なのか? 高齢者や持病のある人は当然だが、意外なのは“温暖”といわれる地域に住んでいる人たちだ。東京都健康長寿医療センターの調査によると、高齢者1万人当たりの入浴中心肺停止件数のワーストは香川県。兵庫県、滋賀県と続き、東京都がワースト4位に顔を出す。逆に北海道は46位、青森県も44位と死亡者が少ない。

「もともと北海道など寒冷地は浴室や脱衣所に暖房施設が備えてあり、寒さ対策がしっかりしている家が多い。温かい地方であっても、冬に暖房がなければヒートショックの危険があります」(東京都市大学・早坂信哉教授=医学博士)

 その事実を裏付ける興味深いリポートがある。給湯器や床暖房でお馴染みのリンナイによる「熱と暮らし通信」で、冬場の浴室を“寒い”と答えた割合が最も高かったのが75%の九州だった。さらに「どんな日に浴槽に入るか?」と聞くと、「寒い時」が44%でトップ。当たり前といえば当たり前だが、寒い時ほど湯船にゆっくり漬かりたくなり、それがアダとなってしまう。

 昨年、東京都で入浴中に死亡した人は1428人。交通事故死は急激に減っているが、身近で危険なのはお風呂だった。

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