天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

道具へのこだわりが手術の完成度をアップさせる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 先月初め、元祖「神の手」と称される脳神経外科医の福島孝徳先生とお話する機会があり、いろいろとアドバイスをいただいたことを前回お伝えしました。福島先生は74歳になられたいまもより速く、より完成度の高い手術に磨きをかけるため、年間365日、手術をされているということでした。そのために手術で使用する道具にもこだわっていて、顕微鏡、メス、照明など、自分に合った使いやすい道具を開発して、セッティングしているといいます。

 これまでの私には、積極的に「道具にこだわって開拓する」という考えはありませんでした。48歳のころに「暗いと見えにくい」という老眼の症状が表れたときは、絶好のタイミングで知人から多重焦点コンタクトレンズを紹介してもらったり、術中に使うヘッドライトもそれまでのハロゲンより2~3倍の明るさが得られるキセノンが登場したり、自然と道具に“出合っていた”感覚です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。