そんな私に対し、福島先生は「自分に合った道具を開発したり、ルーペよりも倍率が高い顕微鏡を使ってみたら、さらに精密な手術ができるようになると思いますよ」とアドバイスをくれたのです。今よりもさらに手術の完成度を高め、心臓外科医としての寿命を延ばす。そのための“ヒント”をもらった思いです。
一般的に、心臓外科の手術では顕微鏡は使用しません。患部を拡大する必要がある際は、倍率5倍程度のルーペを使います。これが顕微鏡なら20倍ほど拡大して見ることができるため、たとえば再手術で癒着を剥離するときなど、組織の変わり目のほんのわずかな隙間になっている部分を見つけられる可能性があります。そうなれば、より精密で完成度の高い手術ができるようになるでしょう。
ただし、課題もあります。脳外科の手術は、患者さんの頭をしっかり固定して動かない状態で行うことが多いため、顕微鏡を使った処理に向いています。一方、心臓外科の手術は心臓を動かしたまま行うケースも多いうえ、ルーペで拡大した細かい視野だけでなく、もっと全体を広く見なければならない場面がたくさんあります。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」