仮に顕微鏡を使って心臓の手術をするとなれば、そうした視野の切り替えをどのように行うかを考えなければなりません。「この患者さんの状態なら、この場面で顕微鏡を使えばより精密な処置ができる」といったように、最初から顕微鏡を使用するポイントを狙いすましていく必要があります。そうしなければ、顕微鏡が持つ本当の利点を引き出すことはできないでしょう。
また、心臓手術で顕微鏡を取り入れるような状況になったときには、メスなどの道具も替えなければいけないかもしれません。顕微鏡によって精密さが上がる分、より小さなストロークで、これまでと同じ作業ができるような道具が必要になるだろうと考えています。
いずれにせよ、心臓外科医にとっては前人未到の領域ですが、それだけ大きな可能性とやりがいを感じています。
外科医には、道具にこだわらなくても「腕」でカバーできる期間があるものです。しかし、その期間の後、最後の最後の完成度をより高めるためには、道具にこだわらなければいけない。実際にそれで成功している福島先生が、それを教えてくれたのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」