役に立つオモシロ医学論文

笑う人は心臓病や脳卒中になりにくいのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 このコラムでは「怒りの感情と心臓病リスク」などを取り上げてきました。怒りの感情はおおむね、心臓病などのリスクを増やす可能性が指摘されていました。では、同じ感情でも“笑い”はどうでしょうか。

 笑いはなんとなく体に良い影響を与えそうなイメージがあります。「笑う頻度が多い」ということは、日常のストレスがあまりないことと関係がありそうです。実際、笑いは抑うつや不眠症、認知症を軽減する効果があるとした研究報告もあるようです。

 日本疫学会誌2016年10月号に「笑いは最善の薬?」と題された論文が掲載されました。この論文は65歳以上の日本人高齢者2万934人を対象に、「笑いの頻度」と「心臓病」「脳卒中」の関連を検討した横断研究(アンケート調査)です。

 笑いの頻度は「ほぼ毎日」「週に1~5日」「月に1~3日」「全くない、もしくはほとんどない」の4つのカテゴリーに分類され、「ほぼ毎日」を基準として、各カテゴリーにおける心臓病、脳卒中のリスクとの関連を検討しています。なお、結果に影響を与えうる、「年齢」「性別」「人口統計的情報」などで結果を補正して解析しています。

 その結果、「ほぼ毎日笑う人」に比べて、「全くない、もしくはほとんどない人」では心臓病が1.2倍、脳卒中は1.6倍多いという結果でした。もちろん、よく笑う人はそもそも健康的である可能性があり、この研究結果が因果関係を決定づけるものではありません。

 しかしながら、「怒りの感情は心臓病が増える」という研究結果も踏まえると、少なくとも、怒る頻度が高い人よりも笑う頻度が高い人のほうが、心臓病や脳卒中のリスクが低い、と言えるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。